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November 26, 2005

THE STEEL CASKET 9

 2週間くらい、独房に寝ころがっていた。ぼくは、10ヶ月で釈放されるのが合法的である、という信念を紙に書きだした。なんとなく強引な理屈も入れておいた。すべてを暗記した。ひとりぼっちで、リハーサルした。やがて、ドラマティックな抑揚と流れるようなデリヴァリーが必要だと気がついた。あと2日で、10ヶ月目が終わるという日。2度目の面談を申し込んでから、2週間。ついにオフィスへ呼びだされた。

 ナチのような男の前に立ったとき、まるでスケアクロウみたいな姿だったろうな、ぼく。ひげ面で、汚くて、ぼろぼろ。奴はシミひとつないイキフンで、ぴかぴかの机の向こうに座っていた。人を小馬鹿にしながら。ぼくは語りだした、

「警備隊長殿、職務に性急なる貴殿の態度が、わたくしの緊急なる面談の要請を、無視させていたように思われます。本日は、わたくしの合法的な拘束期限の履行という、非常に重大なイシューについてきっちりと議論させていただきたく、まいりました。
 貴殿はフェアな人間でなく、偏屈な黒人差別主義者であるとの噂がサーキュレートしておりますが、わたくしは即座に無視し、耳に入れないようにしてまいりました。貴殿のような市民的地位と知性の持ち主は、いっぽうでイルな評判と偏見を抱かれるものだという、わたくしのドグマティックなまでの信念があるからです。
 フェア・プレイの精神に基づきまして、失礼なくらい単刀直入になることをお許し願いたい。もし、明後日までに、わたくしを釈放して下さらなければ、市内に手配いたしました当方のエージェントが、わたくしだけでなく、この所内に日々、歴然と存在する多数の他の非合法的監禁、および不愉快なアクティヴィティを暴露すべく、一連のプロセスを発動いたします。
 ほぼ10ヶ月に渡って、動物のように扱われてまいりました。おかげさまで、本物の動物みたいに、目や耳が研ぎ澄まされております。求めるものは、法の精神です。論点を明瞭にします、貴殿の合法的な代理人たる看守長殿がわたくしを逮捕したのです。たとえ月面のような場所であれ、30日間拘束したのですから、当施設において、しかるべく処遇していただきたい。警備隊長殿、反論される余地は皆無に思われます。失礼なくらい真剣に、わたくしのリリースが合法的なスケジュールで履行されることを確信しております。サー、ご面談、ありがとうございました」

 かれの表情から、侮蔑が消えていった。ぼくは、ブラフじゃないと信じさせたんだ。リスクは避けたいと敵の目が語っていた。この腐った刑務所において、禁止された品目の差し入れがいかに容易であるか、奴もよく承知していた。エージェントにタコをあげることなんて、ガキの使いみたいなものさ。その夜、眠れなかった。朝、釈放の通知がきた。合法的なスケジュールで、出所することになったんだ!

- つづく -

投稿者 Dada : November 26, 2005 06:00 PM