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November 23, 2005

THE STEEL CASKET 6

 最初の1ヶ月で、体重が30ポンド減った。5週目、悪いニュースが二つ入ってきた。ステイシーからの手紙。《デカいほうに賭けろ》が、自宅のトイレで死んでいたという。動揺した。本物の友人だったから。さらに、レイチェルからの手紙。

〈あんたの友だちの医者に会ったよ。あの夜、始末をしてくれた男。酔っ払ってて、あたしに一杯おごった。バーテンダーに職業を訊かれて色々喋ってるうちに、全部ゲロッたわ。あのあと、死体は生き返ったそうじゃない。ふざけんじゃないよ。追伸:さっさと死んでね、キャデラックはあたしがもらうわ〉

 コッポラはメーン州からの出頭要請があり、移送された。ぼくの頭蓋骨への圧力は、日に日に増大した。3ヶ月目、深刻な妄想が襲ってきた。まるで、自白させるための呪い。

 ヘヴィーな麻薬なんて、看守には手に入らない。ウィスキーで我慢していた。髭を剃るのを止めた。自分だとは思えないほど、げっそりとした醜い男。鏡を見るのも止めた。もはや、監獄じゃなかった。悪夢の中に、規則正しく並べられた苦痛と苦悩の光景。

 ママは、ベッドから起きあがれなくなった。手紙を書くこともできないほど症状が悪化していた。友人が代筆した手紙や、電報を受け取っていた。みんな、彼女が天国に召される前に、ぼくが出所することを祈っていた。面会人があった。看守がついてきて、ずっと後ろに立っていた。ステイシーだった。妊娠していた。中年のハスラーと暮らしているらしい。彼女の目を見れば、ぼくがどれだけ酷い顔をしているのか、わかった。やがて、手紙は1ヶ月に1通になり、送金もしてくれなくなった。

 4ヶ月目の終わりには、脳性麻痺みたいに頭蓋骨ががたがた震えだした。あるとき、真夜中すぎに囚人のひとりが発狂した。すべての囚人を起こし、神と母親を侮辱しはじめた。看守が拘束し、ひっぱり、ぼくの監房の前を通過していった。

 こちらまで正気を失いそうな光景だった。素っ裸で、狂人にしか理解不能な言語を、泡だらけの口から発している。精霊を呼びだす呪文。両手で、勃起したペニスをしごいていた。ぼくは、まくらを顔に押しつけた。チビのビッチが鞭で打たれたとき、そうしたみたいに。

 次の日、ぼくはチーフに会わせて欲しい、と申請した。あのナチのような男だ。だが、無視された。1週間後、ひざのあいだに頭蓋骨を埋め、トイレで押し黙っていると、朝食へむかう囚人の足音がせまってきた。すぐ近くを、ぐずぐずと通り過ぎてゆく。

 見あげると、ほとんどオレンジ色に濁った二つの眼球。見覚えのある顔に埋めこまれていた。リロイだった。もう何年も前に、クリスというホーをあいつから奪ったんだ。むこうも、まだ覚えていた。ぼくを睨みつけ、やがて歪んだ笑いを浮かべ、歩き去った。

 すぐに看守を呼び、あいつの罪状を調べさせた。全部、説明してもらった。1940年から、リロイは100回以上、逮捕されていた。すべて酒が原因。精神病院へ2度、収監されていた。ぼくは、42才だった。20才のときにクリスを略奪したんだ。あいつを他の監舎へ移すよう、訴えた。女のことをいい、奴にどれだけ恨まれてるかを伝えた。だが、看守は無理だと答えた。

 奴は、泥酔して捕まり、たったの5日間の禁固刑だった。監舎の中をうろつき廻るはず。復讐しようとするはず。5日間、注意しなくてはいけなかった。ドアから遠くに足をおいた。ナイフとか入手して、通路からハックしてくるかも。ぼくは、一日中不安にかられていた。ガソリンを撒かれ、燃やされたらどうする?

投稿者 Dada : November 23, 2005 06:00 PM