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November 22, 2005

THE STEEL CASKET 5

 その夜、夕食は不味いスペイン米だった。入り乱れた囚人たちの足音が近づいてきた。上の階へ戻っていくのだろう。9時には消灯し、けたたましいラジオも止まった。トイレの水を流す音、突然のオナラに混ざって、ぼくの名前が呼ばれた。ちょうど上にある監房で、だれかが話しているんだ。

「ジム、アイスバーグのおっさんはどうよ。あの色男。下で白人どもが奴を殺すのに20ドル賭けるぜ。ピンプじゃ耐えられない」

「ジャック、あんな野郎、今夜にでも死ねばいいんだ。昔、妹がピンプに遊ばれてよ」

 眠りこけた。真夜中に目が覚めた。叫び声がする。殺さないでくれ、と懇願している。ドタン、バタンという音。起きあがり、ドアのほうへいった。コッポラがトイレの水を流した。

「コッポラ、何があったんだ?」

「ああ、気にすんなよ、ランカスター。夜の看守のお楽しみだよ。運動不足の解消さ。サンドバッグを、反対側の監舎から引っぱり出してる。朝の裁判にでる酔っ払いや老人だ。あんた、まだ何も見てないからな。標的にされても、口答えするなよ。地獄だ。素っ裸にされて、冷たいコンクリートの上に放置される。ここには少なくとも10通り以上の死に方がある」

 じっと、目の前の暗闇を見ていた。レイチェルとステイシーは、どうしているだろう。手紙を書かかなくては。ピンピンについては、検閲されると思うけど・・。数分ごとに看守が通過し、こちらををライトで照らした。 

 朝になった。食事へ向かう囚人たちが、ぼくの房の前を行進していく。昨日までに移送されてきた新人も、みんないた。

 昼すぎ、ステイシーとレイチェルから手紙がきた。お金も送ってくれた。ぼくと会えないことを、悲しんでくれていた。ダウンタウンのバーで働いてるらしい。《デカいほうに賭けろ》が、いろいろ世話してくれてるようだった。

 それから1週間、ぼくはコッポラから生き残る方法を教わった。女たちに直接、手紙を届けてくれる看守もみつけた。彼女たちから賄賂を受け取り、ぼくの分の金も預かってきた。

 ママから手紙がきた。ほとんど読めないほど、ふるえた文字だった。内容は、とても宗教的だった。心配でたまらなかった。監房の狭さと、1年も閉じ込められたらどうしよう、という不安で、しだいに苦しくなっていた。たまに眠れたかと思うと、悪夢。高い金を支払って、いいものを食べてはいた。でも、痩せていった。

投稿者 Dada : November 22, 2005 06:00 PM