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November 21, 2005

THE STEEL CASKET 4

 ママがカリフォルニアへ帰ってから、1週間がすぎた。

 3回目、最後の法廷へよばれた。ぼくは、刑務所の看守のキャプテンによる監察下におかれた。ステイシーは釈放された。

 キャプテンと補佐官は、押し黙ったままだった。4月のまばゆい光を切りとるように、刑務所のセダンが走る。ぼくは、後部座席にいた。足早に歩きまわる、幸運な市民を眺めた。こいつら、ぼくにどんな罰を与えるだろう。ゴムの鞭か、こん棒か。心がちぢんでいた。このまま車の中で死んでもよかった。

 巨大な門をくぐった。見覚えのあるビルディングを、温かい春の日射しが包んでいた。

 運動場の看守たちが、うやうやしくあたまを下げた。車の窓をとおして、ぼくを見ている。セダンは停車し、ぼくらは降りた。手錠をつかまれ、13年前にぶちこまれていたのと同じ建物へ連行された。フラッグを取り付けてある牢屋に入れられた。

 昼すぎ、看守に付き添われ、セキュリティのオフィスへ行進した。机の向こうにいるのは、純粋なるアーリア系の突撃隊員みたいな男。ゴムの鞭も、こん棒ももっていない。フランスの鉄道に乗車したときのヒットラーって、こんな感じかな、と思うような笑いを浮かべた。声はか細くて、酔っ払いのよう。

「さあて、檻から逃げた黒い鳥。乾杯したまえ、たったの11ヶ月の禁固刑だ。運のいいことに、新しい法律が施行される前の逃亡だったんだ。今は、さらに刑罰が加わってる。おっと、懐古してもしょうがない。何日か、君を懲罰房に入れなくちゃ。個人的な恨みは何もない。くく、あんたが逃げたからって、あたしは何も傷ついてない。自信をもって教えてくれないか、どうやって逃げた?」

 ぼくは答えた、

「閣下、お答えできたら、いいんですけど。フーガ、遁走曲です。ある夜、気がついたら、自由の身でハイウェイを歩いてたんです。いやはや、説明したいところですが」

 冷酷な視線が、さらに硬く、青いめのうのようになった。

 口を大きく歪ませて、笑っている。

「フン、いいだろう、ボーイ。近いうちに、記憶が鮮明によみがえる。思い出したら、また私と面会するよう、看守に申告してくれ。じゃあ、幸運を祈るよ。また会えるかな?」

 ひったてられ、風呂へ連れて行かれた。シャワーを浴びると、ぼろぼろのユニフォームに着替えさせられた。医者による診察を済ませ、監房へもどった。フラッグのついた、不潔な小さい牢屋。これから監禁される懲罰房は、監舎の反対側にあった。入り口の前で立ち止まると、看守は鍵をアンロックした。ぼくを押しこむ。正面玄関のすぐ近くだとわかった。ぼくは、新しい棲み家を見まわした。

 人間の精神を痛めつけ、クラッシュさせるための、小さな箱。腕をあげると、指さきが鋼鉄の天井にふれた。よこに伸ばすと、やはり鋼鉄の壁にふれた。バーのついたドアから7フィートも歩くと、もう壁。折りたたみ式のベッドがあった。

 マットレスはしみだらけ。囚人のゲロとか糞の臭いがした。トイレと洗面台は、緑がかった不快な沈殿物まみれ。貧弱な頭蓋骨にとっては、1週間か2週間で、鋼鉄の棺桶と化す場所だ。どれくらい、閉じ込めておくつもりだろう。

 ドアへ歩いていった。バーをつかんだまま、目の前の、空白の壁を見ていた。

「1週間くらい、ダンジョンに幽閉しておけば、ぼくが泣いて許しを請うと思ってるな。プッシーアウトしないぜ。こっちの頭蓋骨は強い。1ヶ月でもイケるっしょ」

 鋼鉄の壁の向こう側から、叩く音がした。痩せた白い手が、四角い紙をもってあらわれた。ぼくは手を伸ばし、受け取った。2本の煙草と3本のマッチがくるんであった。

 何か書いてある、

「ようこそ、《幸せ通り》へ。おれの名はコッポラ。噂によると、あんたはランカスターらしい。13年前に、火薬をまいたんだな。おれは1年半前に火薬をまいたんだ。
 6ヶ月前、連れ戻された。まじで何度も自殺しそうになったよ。すぐに、わかるだろう。いや、酷い場所だぜ。脱獄したせいで、1年、余計に過ごさなくちゃならない。しかも、メーン州から、昔やった偽札造りの罪で、逮捕令状が届いてる。
 覚悟したほうがいいぜ、相棒。俺がここに来てから、4、5人がクラックアップされてる。今、6人いる。3人は脱獄囚だ。残りは2日から1週間の短期懲罰。あとで、他のバックグラウンドも教えてやるよ。欲しいものは、看守を買収すれば手に入る」

 冷たい床に腰をおろし、煙草に火を点けた。コッポラって、ヤバイ男だろうな。6ヶ月も《幸せ通り》にいて、頭蓋骨をストレートアップしてるんだから。ぼくがここへ来てまだ数日だなんて、知らないだろうな・・なんて考えていた。

投稿者 Dada : November 21, 2005 06:00 PM