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October 21, 2005

TRYING A NEW GAME 2

《レッド・アイ》は夜10時半に来た。運転手は太った男で、女の子みたいな口をしていた。ウェスト・サイドへ向かう途中、ぼくは、ハンドルを握るこの男の大きな手が震えていることに気がついた。《レッド・アイ》が今夜の獲物について説明をはじめた。明るい栗色の目がキョロキョロしている。ヘロインでベロベロなんだ。

「ポール、最初の獲物は、簡単だぜ。襲ってくれといってるようなものなんだ。女さ。知り合いが、昨夜、教えてくれたんだ。この女と愛人の男は、あっちじゃいちばんの売人らしい。街中の野郎が、毎晩のように買いにくるみたいで。
 そいつと女は、自宅から3ブロックのところにあるバーで商売してる。今夜みたいな週末は、5000ドルくらい稼ぐと思う。でも、俺の聞いたかぎり、組織の人間じゃないんだ。ひとりの暴力で成りあがった人として、有名みたい。
 まあ、男にかんしては、今夜は心配する必要はない。ニューヨークにネタをコップしに行ってるから。女はバーでしこたま稼いで、深夜には引き揚げることだろう。たぶん、自分でも何パックか持ってるだろうから、それを証拠に尋問しようよ。名前はメイヴィス・シムズっていうんだ。
 バーの裏に停めてある車まで歩くはず。たぶん、強盗は全然、怖れてないんだ。みんなが、男を怖がってるから。女も太ももに小さい銃を仕込んでるらしくて。でも、さすがに警官に対しては使わないと思う。つまり、俺らね。ダウンタウンから来た、変な警官。とにかく、バーから出てきたら速攻、捕まえよう。狡猾なビッチだから。マジで演技しないと。絶対、偽物だとバレないように。強いビッチだから。もし、銃を持ちだしやがったら、残念だけど、殺すことになってしまう。
 バーの中には、ハードな奴らがいっぱいいるはずだから。売人を喜ばすために、俺らを殺しかねないぜ。とにかく、金をせびるのは、女の自宅の近所を速攻、離れてからね。あと、このパーティーに本物の警官を参加させたら絶対にダメ。男は、あの辺りの警官に対しては顔がきくようにしてあるはずだから。
 ペリーが駐車場に面した通りに停めるから。女を逮捕したら、おまえが尋問をはじめる、そのあいだに、ペリーが車を出す。俺は何も言わないことにするよ。ヘマしそうだから。アイス、女を拘束したら、あとはおまえに任せるよ。上手く説得してくれ」

 ペリーは、かなり緊張していた。やがて、バーの近くに車はすべりこんだ。かれの頭蓋骨はブルドッグみたいな首の上でガクガク揺れていた。パーキンソン病みたいに。ぼくは黙っていた。

《レッド・アイ》の説明を聞いて、どうしてこの計画が「簡単」という結論になるのか、全然わからなかった。かなり危険でしょ。獲物が女じゃなかったら、速攻、中止して路面電車で帰ったと思う。

 彼女が以前、ぼくの顔を見たことがあったら、どうしよう。《アイスバーグ》だとバレて、銃を突きつけられたら、どうしよう。彼女の男は、イケナイお友だちも多そうだし。もしかして、目ん玉を喉に突っこまれて路地で発見されるハメになるかも。ぼくらは、女の車から10フィートほど離れた闇の中で待つことにした。

「レッド、ぼくも銃をもっていこうかな。女が出てきたら、目にライトを浴びせて」

投稿者 Dada : October 21, 2005 06:00 PM