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October 31, 2005

JAILBREAK 6

 小屋の中は、じょじょに真っ暗になりはじめた。ぼくはかんぬきをあげ、ドアを押し、開けた。運動場を見てみる。外へ出た。物音ひとつしなかった。ドアを閉めると、鈍いメタリック音がした。鍵がかかったんだ。かんぬきが落ちたのだろう。

「このフリークな偶然は、追っ手を混乱させるはずだ」

 食堂へ走っていった。屋根に登らなくては。ぼくは窓のバーに手をかけ、枠の上に立った。手をのばし、排水パイプをつかんだ。足をスウィングさせ、屋根まで上がった。

 左のほうを見た。壁を警備する看守が、休憩所で休んでいるシルエットがあった。さらに目をスライドさせ、壁と隣接している監舎のほうを見た。長い道のりだ。ぼくは、次のビルにむかって、屋根の上を歩いていった。後ろを振り返ると、看守は、壁に向かって歩きはじめている。腕にはライフルを抱えていた。

 すぐに、伏せた。たぶん、見えてないはず。この姿勢のまま、もし、脱獄囚を見つけたら、看守はどうリアクションをとるよう、教育されてるのかしら、などと考えながら、じっとしていた。もしかして、頭蓋骨を撃たれるのかな、いや、心臓、お腹?

 だが、看守はまた、休憩所へと戻っていった。ぼくにとって幸運なことに、食堂の屋根は教会の建物とくっついていた。コンクリートの梁でつながっていた。1フィートも幅がなくて、12フィートくらいの長さ。バカでかい囚人用の作業靴だけで、ハミでてしまいそうな幅。しかも、ツヤのある表面で、足が滑った。四月の末の風に煽られ、まるで2階までの高さにあるシーソーの上にいるみたいな感覚だったよ。

 やがて、梁のはしまで来ると、上を見た。右手を伸ばし、爪先立ちになった。教会の屋根は、ぼくの人差し指の2フィートくらい上。ぼくは、つるつる滑る梁を数フィート引き返さなくてはいけなかった。で、2フィートぶん、ジャンプするためにスピードつけた。で、屋根の排水パイプをグラブしなくちゃいけなかった。

 そーっと、6フィートばかり戻った。屋根を見つめながら、がたがた震える足を落ち着かせた。後ろを見た。看守は壁にいない。もう、足場がどれだけ狭いのかは考えないようにした。そして、足を踏みだした。もう片方の足をホイップ。つやつや、テカテカ、さらにパンプ。皮のソールがトロンプ。腕が真っ暗な空間をさまよった。目は、屋根だけに集中した。

投稿者 Dada : October 31, 2005 06:00 PM