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October 12, 2005

IN A SEWER 5

 次の日の午前1時に《スウィート》から電話があった。隣の部屋の住人が受話器を取り、ぼくのドアをノックした。オーバーコートを着て廊下へ出ると、外は氷点下の気温だった。

「バーグ、《ポイズン》がおまえの若いビッチを盗んだぜ。フェイだ。あの女がおまえの致命的な秘密を知ってないといいんだが。さあ、居場所を変えろ。また連絡する」

 切れた。とりあえず戻り、ベッドに寝た。

「《ポイズン》はビッチにクイズをだすだろう、したら、例の偽札造りの話が漏れるだろう。自分のゲームをタイトにするために、奴はそんな話は嘘だと彼女の目を覚ますに違いない。ぼくが本当はこの街に隠れていることも、ぶちまけるだろう。
 クリスだけが頼りだ。彼女がいなかったら、1時間でひとりぼっちになってた。残りのステイブルをアンダーグラウンドに連れて行くためにも、彼女の助けが必要だ。追っ手がせまったら、ぼくだけ街を出ることも考えなくては。そのあと、すぐにステイブルに後を追わせよう。
 他の3人のホーもあっというまにもってかれるな。奴に本当のことを知らされたら、ぼくの女でいることなんてしょっぱくてしょうがないから。クリス、急いでくれ、連絡してくれ」

 午前3時、クリスから電話。ぼくはパジャマのまま電話に走った。話しながら、ほとんど凍え死にしそうだった。

「ダディ、部屋からかけてるの。《ポイズン》が、フェイと彼女の服をもって行ったよ。あいつ、ファミリー全員にあたしたちが仕掛けたゲームをバラしたわ。ドット、ローズ、ペニーはあいつのところへ行くって。泣きながら荷造りしてる。引き止められない。彼女たち、あたしを憎んでるから。奴はあたしのベッドルームにも来た。もう自分の女になったみたいな態度だったわ。ピストルがあったら、撃ち殺してたよ。
 こう言われたの、『ミス・ビッチ、あのニガーは終わったよ。おまえが最後のホーだ。おまえみたいに美しいビッチが、自分しか女がいないようなピンプと一緒にいるわけないよな。フェイをコップしたから、俺のホーは8人になった。俺はゲームの中にいる。ひとりのホーも手放さない。この街で最高のピンプになったんだ。おまえは、この街で最高のホー。おまえが自分の男として選べるピンプは、俺しかいないんだよ。ビッチ、来い、8人のステイブルの女王にしてやるよ。服をまとめろ、フェイと一緒に来るんだ。《アイスバーグ》は刑務所行きだぜ?』
 ダディ、どうしよう。《ポイズン》はここに戻ってくるわ、あたしをレイプすると思う。ホント、どうしよう。絶叫して、そのまま独房に入っちゃいそうだよ」

 裏口のドアの下の隙間から吹きつける零度の空気のせいで、ぼくは気を失わずに済んでいた。がたがたと震える足を、冷たい汗がしたたり落ちた。喉が渇き、けいれんした。まるでエコー室から聞こえるような自分の声が響いた。

「クリス、冷静になるんだ。ぼくは《アイスバーグ》だぜ。いつものように、解決策がある。さあ、よく聞いて。荷物をまとめるんだ。ビルから出て、使用人をつかまえろ。そいつに金を払って、キャデラックを隠したガレージの近くにあるホテルまで連れて行ってもらうんだ。チェックインして、荷物を置く。キャデラックを運転してホテルへ戻り、荷物をピックアップ、ダウタウンへ行く。そこで別のホテルにチェックインしろ。車は再びガレージに隠すんだ。そのあと、電車に乗ってホテルへ帰る。終わったら電話して」

 部屋に戻り、冷たい水で顔を洗った。鏡を見た。ハロウィンの化け物。フレッシュな青二才のかけらも残っていなかった。かつて輝いてた白目は血走り、衰えている。どっかのジョーカーみたいな黒いくまは、インクをこぼしたスパイグラスのよう。

 鎮静剤を探しはじめた。たかぶった神経を落とさないと、どうにもなんない。コカインなら少しあった。そんなのいらない。とにかく頭蓋骨を落ち着かせたかった。でも鎮静剤がないんだ。

 どっかのスーツケースの中にノートがあるはずだった。そこに15ブロックも離れてない売人の電話番号が書いてある。そいつならもってる。なかったら、もういいや、ヘロインを売ってもらおう。1キャップなら中毒にならないし。この苦痛をキックしないとやってらんない。

 クリスから電話があるまで、2時間はかかるだろう。電話番号が見つかった。1時間以内に6キャップ買うことになった。

 トレンチ・コートの袖に、ピンで留めた札束を隠してあった。そいつを取り出す。コートのポケットに突っ込んだ。グレープフルーツを入れたみたいにふくらんだ。すぐに帰って来るんだから。また金を戻した。6800ドル以上あった。30ドルだけ抜いた。パジャマのパンツとシャツを重ね着し、重たいコートを羽織り、靴をはいた。

 地獄のように急いでいた。ドアを閉めると、内側から鍵がかかる音がした。売人と電話で話してから5分もしないうちに部屋を出たんだ。午前4時、北風が頭蓋骨から帽子を吹き飛ばそうとした。でも、気持ちよかった。外の空気を吸うのは数ヶ月ぶりだった。

投稿者 Dada : October 12, 2005 06:00 PM