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September 17, 2005

TO GAIN A STABLE 1

 ノックする音。サイラスだろう。ドアへ行って開けてやった。かれは、不思議なことに、美しくなっていた。この魔法使いの糞野郎は、ぼくの朝食がのったトレイを手にしている。こいつ、赤いニットのスーツを着たキュートな黒人のビッチに変身したのか? いや、チビのビッチだった。口元に浮かびそうになった安堵の笑みを、すかさず殺した。顔をひねって、トイレの壁にぼくを叩きつけたときの《スウィート》の表情をコピーした。

「ビッチ、おまえ、殺す。午前三時から、ずっと街中の病院やら刑務所やらに電話してんだよ。死体安置所にもかけた。さあ、話してもらおうか、おまえのストーリーはなんだ」

 彼女は、ぼくを見上げている。にっこり笑っている。ぼくの横を通りすぎ、ベッドルームへ入っていった。追いかけた。ドレッサーの上にトレイを置くと、ビッチは胸の谷間のずっと奥に指を突っこんだ。そして、湿った札束をとりだし、ぼくに手渡した。

「ダディ、最後の客が、50ドル払うっていうの。一晩中トリックしろってさ。午前2時にひっかけた男なんだけど。ベイビー、ここに128ドルあるわ。ホテルへ帰ってきたら、サイラスがあなたの朝食をもっていたから、2ドル渡して受け取ってきた。だから、昨夜の稼ぎは130ドルだよ。
 あのね、ダディ、ここから数マイル離れたところに、すごく仕事がしやすいストリートを発見したの。《ねぐら》って呼ばれてる店の辺りなんだ。あたしのこと、心配してくれてたんだね。そうだ! 忘れるところだった。指をクロスさせといてね。そのうち、朝、新しい女の子を連れてくるかも。すごくなかよくなったの。彼女の男、たいしたことないみたい。泥棒なんだって」

「フィリス、ぺちゃくちゃうるせーんだよ。いつもこんくらい稼いでくりゃいーんだ。さあ、風呂に入れ。金を数えるからさ。いいか、ジャンキーのビッチはいらないからな。おまえがコップする前に、彼女をクリーンにしとけ」

 ぼくは、朝食のことなんか忘れてしまった。外へ出て、フォードに乗りこんだ。ドラッグストアへ行き、軟膏と絆創膏を買ってやったのだった。

投稿者 Dada : September 17, 2005 06:30 PM