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September 08, 2005
THE UNWRITTEN BOOK 2
15分ほど車を走らせると、こぎれいなバーベキュー屋台をみつけた。白いのっぽの帽子をかぶった黒人の男が、鶏を殺して窓辺に吊している。ぼくは入っていき、2羽を買って出てきた。ミス・ピーチは、ホントにこれが大好物なんだろう。あのひとに気に入られておけば、悪いようにはならないはずだ。
何度か曲がり角を間違えたけれど、《スウィート》のビルに到着した。ちょうど1ヶ月前、悪魔がぼくを逮捕しようとした辺りにフォードを駐車した。モンキー・スーツを着た若い白人の男がエントランスに立っている。われわれの社会的な身分を逆転させるために、《スウィート》なりに頑張っているみたいだ。
ぼくは、ロビーのデスクへいった。通行証を受け取りに来た浮浪者みたいな気分。エレベーターに乗りこんだ。まえとは違う女がパネルを操作してくれた。チキンのスパイシーな香りが彼女の鼻をくすぐる。このあいだの熟れきった匂いのするアソコの女ほど美しくない。セックスが好きじゃないのかも。
ケージから降りた。人なつっこい茶色い蛇のような執事の姿はなかった。休みなんだろう。この建物で6フィートの金髪美女にしゃぶらせてる可能性はゼロだな。
女がやってきた。エレベーターに乗り込むようだ。ミミだった。目をチカチカさせながら、ぼくの顔を一瞥した。まるで凍ったフランスの湖みたいに冷たい目線。通り過ぎた。テンのストールに身を包んだ彼女は、フランスの練り菓子のようだった。彼女をフリーク・オフさせることなんて、とてもできないな。
ぼくは、広間へ続くドアへむかった。女神の石像はあいかわらず水を噴出していた。《スウィート》がソファに座っていた。隣にいたミス・ピーチがまずぼくを見た。絨毯の上を飛び跳ねて、ぼくの手首を掴んだ。チキンを奪い取ると、《スウィート》の前にあるアラベスター柄のカクテル・テーブルに置いた。
《スウィート》がこちらを見ている。反射的に顔の筋肉を引き締め、タイトな表情をした。ステップを下り、彼のほうへ近寄った。彼は、水玉のショーツしか身につけていなかった。昼間の日射しの下で見ると、ソファの上にかかった絵画に描かれた女にほくろがあるのがわかった。
「こんにちは、ジョーンズさん。まだチキンが熱いといいんですが」
「キッド、しょーもねー面をしてるな。糞みたいなビッチに手を焼いてるみたいだな。だが、今日の顔のほうがいいぜ。ニヤニヤ笑ってる男にゲームは無理だということが、わかってきたみたいだ。こっちへ来いよ、このソファに座るんだ。ベイビーと俺がチキンを食ってるあいだに、おまえとおまえのホーのことを話すんだ。どこで、どうやってそのホーを手に入れたのかを知りたいんだ。彼女のこと、彼女を手に入れてから起きたこと、覚えていることの全てを説明してみろ。おまえが記憶しているかぎり、自分自身のことも語るんだ。順番はどうでもいいから」
投稿者 Dada : September 8, 2005 06:00 PM