« THE BUTTERFLY 13 | メイン | THE UNWRITTEN BOOK 1 »

September 06, 2005

THE BUTTERFLY 14

 クリスがささやいた、「ダディ、長くは話せないの。リロイは寝てる。あたしのネグリジェから落ちた蝶をみつけたみたい。まるで狂人のように怒ったわ。そっちへ行ったことに気付いたの。さらに悪いニュースがある。バンドの話は無くなったわ。断ってしまったの。今のコンボを率いて、オハイオをまわることになると思う。

 彼のエージェントは、一夜かぎりのショーをたくさんブッキングしてる。あたしも一緒に連れて行かれるわ。ダディ、あたしたちのこと、忘れないからね。連絡するから。たぶん、明日の正午には出発することになる。お別れのキスをするチャンスはあるかしら。愛してるわ、ブラッド。そして、いつか《ミスター・スリラー》と・・・」

 電話が切られる瞬間、リロイの眠たげな声が、啜り泣くように彼女の名前を呼ぶのを聞いた。ぼくは、チビのほうを見た。デカい口をおっぴろげて眠っている。泡のようなよだれが、あごまで垂れている。酸っぱい匂いのする髪の毛は、先のほうがよじれていた。下の階にある美容院へ行かせたほうがいいだろう。

 ぼくは思った、「何なんだよ、このブレークは。罪深いほどイケメンなのにさ。隣にいるのは泡だらけのネズミみたいなビッチ。廊下をはさんだ向かいの部屋には、世界一顔が醜い男。そいつの隣には、あんなにかわいい女がいるのか。しかも、あの女はぼくのことが好きなんだ。どうなってんだよ。クリスをモノにしたら、この手で彼女の《ベル》を鳴らしまくってやる」

 そのあと、眠れなかった。昼頃にチビが目を覚ました。すぐに通りを渡って、食堂でメシを買ってきてくれた。14時には、仕事へ出かけていった。

 サイラスから電話がきた。クリスがチェックアウトしているという。ぼくは、彼女とスカーフェイスが車に荷物を積み込み、走り去るのを眺めていた。

 その日も、チビは午前2時ごろ戻ってきた。稼ぎはたったの20ドル。白人の客を避けていた。マックスと金髪の警官のせいだ。ぼくが何度言い聞かせても、ダメだった。3ドルとか5ドルでいいから、黒人の客ばかり選ぶようになってしまった。白人の客をとってマックスに逮捕されるのを、怖れているようだった。

- つづく -

投稿者 Dada : September 6, 2005 12:35 AM