« THE BUTTERFLY 12 | メイン | THE BUTTERFLY 14 »

September 05, 2005

THE BUTTERFLY 13

 スカーフェイスは、呻くように深いため息をした。まるで、最後の呼吸のように。かがんで蝶を拾いあげた。不気味なゾンビ野郎はもう片方の手もポケットから出した。ぼくを睨みつけている。瞬きひとつしないオレンジ色の目から涙がこぼれ落ちた。憔悴しきった頬を震わせながら、蝶を引きちぎりピンクの糸くずをカーペットに落とした。

 彼は、こちらに背中を向け、歩き去った。ぼくはドアを閉めると、すぐに少量のコカインを注射した。ローブを脱ぎ捨てた。冷たい汗がしたたり落ちていた。シャワーを浴びた。窓辺にあるクリスがいた椅子に腰かけた。甘い香りは、まだ立ちのぼっている。それから1時間くらい、廊下の向こう側から喚き散らす声と、啜り泣く声が聞こえてきた。スカーフェイスがクリスを責めているんだ。時計の針は深夜を差していた。朝から何も食べていなかったけれど、腹は減っていない。コカインが効いていた。

 ぼくは考えた、「あの嫉妬に狂った阿呆がクリスを殺さないといいんだけど。何百ドルもの札束で焚き火をするようなものだぜ。もし彼女が結婚していなくて、ここに銃があったら、今すぐ行って解放してあげるんだけどな」

 電話が鳴った。サイラスだった。

「どうなりました、お兄さん。彼女、ベッドでどうでした? 男に捕まったとか? 忙しかったんですよ。チェックを入れる暇が無くてね。心配してたんですよ。女に聞いたら、連絡するのが遅れたそうだから。エレベーターで足止め喰らわしたんだけど」

「危なかったよ、サイラス。でも、ぼくはピンプだから。いつまでもベタベタしてないよ。週末、宿泊代を払うときに、あんたとおばさんにチップをはずむよ。サイラス、スカーフェイスや彼女について、新しいニュースが入ったら、すぐに伝えてくれ」

「イエー、大丈夫ですよ。ここの出来事は何でも耳に入りますから。必ず伝えますよ。じゃ、おやすみなさい。あっしは帰るから」

 受話器を置き、ベッドに横になった。ぼくは、マックスと金髪警官がまたチビを路地裏でレイプしてないだろうか、と考えていた。大麻を吸った。やがて、眠りに落ちた。また電話のベルが鳴った。ビッチだった。

「ダディ、あなたのベイビーよ。2時を過ぎたわ、帰ってもいい?」

「ビッチ、幾らになった?」

「30ドル。へとへとだよ、ダディ。今日の客は黒人ばっかりだったから」

「いいよ、風呂に入りな。つべこべ言うな。いらつかせんな。心配させやがって」

 ビッチは、12時間も働いていたことになる。へとへとだろう。風呂に入って30分もしないうちに、ぼくの隣でいびきをかいていた。再び電話が鳴ったとき、ぼくもうとうとしていた。灯りをつけ、受話器を取った。クリスだった。

投稿者 Dada : September 5, 2005 05:00 PM