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September 01, 2005

THE BUTTERFLY 10

「ビッチ、ぼくのホーになるなら、いつでもあたまをメローにしてやるよ。でも、今はちがう。《ミスター・スリラー》はカタギの彼氏がいる女とは何もしない。さあ、奴が帰ってくるまえに部屋へ戻って服を着るんだ。おまえ、結婚してんじゃないのか?」

「ちょっと、何人の女がいるの? たぶん、いっぱいだよね。あたしなんか、かまってくれなそう。愛してくれるまえに、長い行列に並ばないといけないんだね」

「ホー、ぼくの質問に答えろよ。警官のつもり? もし、ぼくのホーになったら、何も心配しなくていい、尻の穴と金のことだけ考えてればいい。さあ、答えるんだ」

「ブラッド、答えたくないの、どうしてかというと、彼と結婚しているから。リロイ、これが夫の名前なんだけど、あのひとは命の恩人なの。昔は素晴らしかったのよ。イケメンだったし。事故が起こる前までは、あんなに嫉妬深くなかった。あたしたち、もう2年も示談の成立を待っているの。ブラッド、正直な話、あなたはタイプよ。どうしていいかわからない。この2年で、あなたが夫以外で初めて話した男だなんて、信じてもらえる? もうリロイを愛してないよ」

 コカインのおかげで、彼女は早口にまくしたてた。顔に傷のある彼氏を殺さないかぎり、今夜セックスするのは無理だろう。計画を変更しなくてはいけなかった。まず、リロイから彼女を引き剥がすことだった。この女は、ぜったいに大金を稼ぎ出すはずだ。たぶん、何かいいアイディアが浮かぶだろう。もしかしたら、示談金とやらもせしめることができるかも。もちろん、永遠に待っているなんて嫌だ。状況によっては、示談金はあきらめよう。

 リロイが彼女を失うことは目に見えていた。あんな醜い顔と嫉妬では、これ以上、独り占めすることは不可能だった。とにかく、クリスがぼくと同じレベルで話してくれるか、それが知りたかったんだ。サイラスは、この女が元ホーだと言っていた。それで、こんな風に聞いてみた、

「クリス、きみの人生の話をざっくりでいいからしてよ。聞き終わったら、答えを見つけてあげられると思うから」

投稿者 Dada : September 1, 2005 06:55 PM