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August 31, 2005

THE BUTTERFLY 9

「そんな目でみないで。あたしの心がよめるんでしょ。そんな風にみられたら、不安になる。催眠術か、いつか本でよんだことのあるロシアの怪僧みたい」

「クリス、ぼくのホーになるんだ。すべてをシェアしよう。こんなリーファーなんて、前菜にすぎない。大麻は低級なスカンク女がやるものさ。ヘロインは墓場へ直行の奴隷がやるもの。美しくて、すばらしい人間たちは、コカインなんだ。
 クリス、コカインを注射すると、魔法の音楽が蜘蛛の巣のように降り注ぐ。そして頭蓋骨のなかで、鐘が鳴るんだ。体中の穴という穴に、ぼくのチンコを挿入されているような気持ちになる。きみの体のなかに、秘密の炎が点火されるんだ。奇跡なんだよ、クリス。スリルを味わうだけなんだ、中毒にはならない。きみが弱虫じゃないことはしってるよ。さあ、このゲームを試してみる?」

「怖かったり、傷ついたりしないなら。そうしたら、すぐに止めてよ。量も少なめにしてね、ベイビー。どこに刺せばいいの?」

 ぼくは、彼女の左足をもちあげ、椅子の肘掛けに乗せた。太ももの上のほうに、太い血管があった。そっと針を刺した。びくっとなった。注射器の中は赤くなった。そっと押し込んでいく。彼女は目を大きく見開いた。白い歯で、下唇を噛んでいる。

 やがて、注射器は空になった。針を引き抜いた。彼女は、身をこわばらせている。肘掛けから脚をおろした。足首をぼくの脇腹にこすりつけた。喉がひくひくしている。

 ぼくは、自分が最初のときに吐いたことを思いだした。椅子をスライドさせ、大急ぎでベッドルームへいってゴミ箱を取ってきた。ぎりぎり間に合った。彼女はいきなりぶちまけた。ぼくは、ゲロをトイレへ流して洗い、戻ってきた。彼女は、笑いながら足をさすっていた。

「ごめんなさい。汚くしちゃって。ダディ、あ〜ん、やばい、これ。ベイビー、ここに来て、こんな気持ちになれたことを、感謝しているの。あの鐘の音はなんなの? ベイビー、こんなのをいつもやっているの? 毎日やりたいよ。いつもこんな感じでいたいよ。ねえ、ベッドにいこうよ、そろそろ《ミスター・スリラー》に挨拶したい」

投稿者 Dada : August 31, 2005 06:55 PM