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August 26, 2005

THE BUTTERFLY 5

 白人の悪魔が身分証の提示を求めたことを覚えていた。ぼくはサイラスを呼んだ。どこへ行けばいいか教えてもらった。20ドル渡せば、テストなしで運転免許証を発行してくれるそうだ。服を着て、出かけた。簡単に手に入った。1時間で戻ってきた。

 通りに面した窓のほうへ椅子を移動させ、双眼鏡で見た。まだ昼間の日射しだ。ストリートにチビはいなかった。向かいの食堂の中を覗くと、オーバーオールを着た巨体の黒人とカウンターで会話しているのが見えた。男は刺青をしている。ふたりはそろって店を出ると、マーティン・ホテルのほうへ歩いていった。

 さて、422号室に住んでいる、顔に傷のあるラッパ吹きがひとりでホテルから出てきた。オンボロのフォードに乗り込むと、走り去った。そこで、いいアイディアが浮かんだ。いつかはチビもいなくなるんだ。受話器をとり、フロントにたのんで422号室につないでもらった。元娼婦だという、黄色くて美しい女が出た。サイラスの話を聞いておいてよかった。おかげで、上手く話すことができた。

「さあ、自分をコントロールして。420号室のベッドルームからかけてるんだ。夢見がちな目をしたハンサムなニガさ。尻にタオルを巻いていたセクシーなニガだよ。きみが透視したチンコの持ち主だよ、今もギンギンに勃起してる。きみがじっくりと鑑賞した、甘くてもっこりとしたあそこの男だよ、覚えてるかい?」

「たぶん・・。でも、お願いだからやめて。面倒はごめんだから。何が欲しいの? レディはヘンタイとは話さないわ」

「100万ドルが欲しいんだよ。あと、しまりがよくて、罠みたいな、美しいビッチ。わかるでしょ、ヘンタイじゃない。廊下で目が合った瞬間から、きみのパンティを肉棒がロックオンしてるんだから」

 女は笑った。スリルを感じているんだ。ラッパ吹きがカタギにさせても、彼女の体の中にはまだホーの血が騒いでいるってわけさ。この女はレベルが高かった。高校の非常階段でセックスしたことがあるとか、そういうレベルじゃなかった。

「あたし、お酒のめないし、あなたのこと、よく知らないし」

「ちょっと、夢の中で会ったじゃん。覚えてないの。目を開けるといつもいなくなってて、でもあそこは濡れてる。そんな夢の中だけの男が、今ここにいるんだよ。
 ラッキーなんだよ、ビッチ。さっき、夢から出てきたんだ。ぼくは生きてて、現実に廊下をはさんだ向かいの部屋にいるんだ。こっちへおいでよ、スイッチを入れてあげるよ、番犬のことは心配しないで、さっき何処かへ行ったのを見たよ。ベイビー、ぼくのホーのひとりに、20ドルが入ったケーキを焼かせて届けるよ」

「ねえ、結婚してたりしないよね? やだよ、喉をかっ切られたりしたら。今の生活を壊されるのも困るし、わかってるの」

「ああ、結婚してるよ、ピンプ・ゲームと。きみだって、まだメンバーのひとりなんだよ。ここのところ、会費を支払ってないじゃないか。これから俺のところへ来れば、またいいホーに戻れるよ、さあ、はやくしろよ!」

「裸なのよ、何か着るから。数分でいくよ。麻薬中毒じゃないよね? あたしは大麻しかやらないんだから」

「ちがうよ、シュガー。ただ愛に飢えた男さ。大麻なら、ブラック・ガニオンがあるよ。ベイビー、知ってるだろ・・」

 電話を切った。ドレッサーへいき、顔にパウダーした。ブラシをかけた。こぶに当たらないように。髪は黒く、つやつやにカールさせた。クローゼットへいき、黄色いローブを着た。ダランスキーにダンスホールで逮捕される直前に買ったものだった。

投稿者 Dada : August 26, 2005 12:15 PM