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August 19, 2005

GRINNING SLIM 17

 ぼくは、ボンネットの上でもがいた。ふりむくと、警官の顔があった。赤いふくれた面を見あげた。そのとき、キャデラックの影から《トップ》があらわれ、警官との間に立った。

「なんのビーフですか、お巡りさん。こいつは俺の甥っ子で、これは俺の車です。キッドを待たせていたんすよ。何にもやらかしてない。《スウィート》のパーティーへ行っていただけです。知ってるでしょ。俺たちは、あの男と個人的な付き合いがあるんですよ。ディグしてくれました?」

 悪魔のふくれっ面はしわくちゃのハイエナの笑いに変化していった。フロントガラスをコンコンと叩く。後部座席からもう一人の悪魔の白い顔がでてきた。外から手招きされ、車から降り、二人の悪魔は並んで立った。

「ちょっとしたミスがあったようだ、ジョニー。このお二人の紳士はジョーンズさんのお友だちなんだそうだ。旦那、甥っ子さんに、これからはすぐに名前を出すよう言っておいて下さい。さてと、仕事に戻らなくちゃ。この地区に女の強盗が侵入してるらしいんです。警部補がうるさくてね。ご迷惑をおかけしました。それでは・・」

 彼らは、通りを渡っていった。黒のシボレーに乗り込むと、あっという間に走り去った。ぼくは、尻のポケットからハンカチを取り出し、顔を拭った。

 ボンネットからガラスの破片や汚物を取り除いた。そのままハンカチをドブへ捨ててしまった。車に乗り込む。《トップ》はユーターンすると、ふたたび黒人街へむかって走り出した。ぼくは、頭のこぶに触れてみた。じくじくしている。ちょっと切れてるみたいだった。ジャケットの折り返しについたハンカチに指を擦りつけた。

 ぼくは思った、「糞、この街はやっぱハードだな、長くはもたないかも。プレストンの親父が言ってた通り、地元に戻った方がいいのかな・・」

「あーあ、《スウィート》・ジョーンズはマジでヤバイわ、あんたが彼の名前を出した瞬間、魔法のように効いたからな」と、ぼく。

「魔法なら、てめえの尻にかけてろ。唯一の魔法は、《スウィート》が警官どもに毎週払っているCノートなんだ。このへんの警官は、あいつの底なしのポケットマネーのお陰で、完全に買収されてるんだよ。
 あれ? 匂ってるぞ? パンツの中に糞しやがったな? おまえさ、マジで尻を洗って出直した方がいいよ。《レッド・コーラ》を上手くピンピンできなかったしさ。あの女、この国じゃ一、二を争う強盗なんだぜ」と《トップ》。

「そんなこと言ったって、あんなキチガイのババア、もし合衆国金塊貯蔵庫までの通路を知ってたとしても、絶対、嫌だよ。あんな糞ババアのホー」

「馬鹿、それがダメなピンプの発言なんだよ。本当にピンプ・ゲームを職業にしたのなら、金歯で足が三本しかなくて頭が二つあるブルドッグからだって金をせびるべきなんだ。いいか、キッド、俺がおまえに《スウィート》について話したことを、決して他人に言うんじゃないぞ。あの話は、俺しか聞いてないんだからな。もしバレたら、頭をひねりちぎられて、サッカーボールにされちまうからな・・」

「ああ、《トップ》、言うわけないだろ。友だちを陥れるような馬鹿じゃないよ」

投稿者 Dada : August 19, 2005 06:00 PM