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August 16, 2005

GRINNING SLIM 14

 ぼくは、便器へ歩み寄った。蓋を開けた。そのとき、タフなビッチ、《レッド・コーラ》がすばやく入ってきた。舌なめずりをしている。灰色の瞳はヴードゥー状態になっている。若くて純粋なぼくに、興奮してしょうがないみたいだ。ヘロインの回りきった頭と熱いお口、このふたつを兼ね備えた女殺し屋というわけだ。

 突っ立ったまま、頭の中にある薄っぺらなカタログをめくってみた。残念ながら、こんなときに実行すべき正しいクラックは書いていない。なんだか自信無さそうに口をボソボソとさせるのがやっとだった。

「ねえ、ちょっと聞いてくれよ、ガール、まだ1円ももらってないぜ、おまえの彼氏じゃないんだし、金はどうしたんだよ」

 この言葉は、腹ぺこの豹にわらしべ1本で立ち向かうようなものだった。彼女は例のナイフを胸の谷間から取り出し、光り輝く刃をポップした。もう片方の手で、ぼくのズボンのチャックを開ける。タイルの床にボタンがはじけ飛ぶ音が聞こえた。心臓がキツネの早歩きみたいに高鳴った。

「まったく、可愛いお坊ちゃんだねえ、ピンプなんかじゃないよ。美味しそうなお尻をぺろぺろしてあげるよ、そうしないと、チンコを切り落とすから」

 ぼくは、便器の後ろにある壁に背中をぴったりとくっつけた。汗でべとべとの指が冷たいタイルに触れた。彼女がズボンの中身を握りしめた瞬間、《スウィート》が駆け込んできた。長い髪をわし掴みにする。彼女は痛くてうめき声をあげた。ぼくから引き剥がされ、ドアの方へ引っぱられた。《スウィート》は、女を罵りながら先の尖った靴で大きな尻を何度も蹴った。

「こら、ビッチ、こいつは俺のピンプ学校の生徒だ。お前なんかに《ジョージア》させねえよ、こら、ビッチ、こら」

 ハイヒールがタイルの床にスタッカートを刻んで走り去っていくと、彼はこちらへ向き直った。真っ黒な顔は怒りで灰色になっていた。《スウィート》はぼくが黄色いニガじゃないということを、忘れているかもしれない。《トップ》が話していた、殺された四人のニガのことを思いだした。

 彼は、ぺちゃんこの鼻をぼくの鼻に押しつけてきた。大声で怒鳴りつけられると、唾がスプレーみたいに唇に降り注ぐのがわかった。コートを締めあげられ、首が窒息しそうだった。ぼくの体を壁から2メートルも引っ張り、彼は叫んだ・・・

投稿者 Dada : August 16, 2005 06:00 PM