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July 19, 2005

MELODY OFF KEY 7

 彼女の家は、黒人のキャンプからかなり離れた場所にあった。1時間くらい走ったと思う。白人の世界へ入っていくことは、地獄を去り天国へ入場することだった。4月の庭の香り。整然と並んでいる豪奢な家の柱。月明かりに照らされて光り輝いている。ストリートにはまったく物音がしない。ランスの聖堂はこんな風なんだろうなあ。

 ぼくは思っていた、「なんだよこれ・・? 地獄のような街に暮らしている黒人の98パーセントは、地上の楽園があることなどこれっぽっちも知らずに生き、死んでいくのか。白人たちと同じ栄光を手にするためのパスポートは2通りだね。白い肌か、うなるような札束。まじめにピンプするんだ。お金をコップするんだ。少なくとも、今夜はこの天国でシンデレラをクラックできるんだから、幸せ者だと思わなくちゃ。いいな、いいな。自分にないものをもってる女って、いいな」

 車は、彼女の家のドライヴ・ウェイに入っていく。正面に見える部屋。青いカーテンごしに食卓の灯りが柔らかく点っている。彼女は、ピンクのしっくいのガレージにリンカーンを停めた。このガレージは家とつながっていた。裏口から入る。台所を通り抜けた。闇の中なのに、きらきらと光っていた。半ば真っ暗な家の中を泥棒みたいに移動した。ふかふか絨毯が敷かれた階段をのぼり終えると、彼女は止まった。

「ブラッド、あたしはこの家で生まれたの。この辺に住んでいる人はみんな知り合い同士だから、だれか友だちが通ったとき、この家に人がいると知ったら、遊びに来るかもしれないから、奥にあるあたしのベッドルームがいいと思う・・」

 ベッドルーム。鏡台の上にある小さな青い灯りを点けた。部屋は水色と生成の白でまとめられていた。クイーン・サイズのベッドには、青いサテンのキャノピーが付いている。ぼくは、鏡台の隣にある白い絹の寝椅子に腰かけた。彼女が、アイボリーのラジオのスイッチを入れた。ドビュッシーの《月の光》の甘い旋律が満ちた。

 彼女は、仔牛のなめし革製の小さな靴を脱ぎ飛ばした。ストリートにいる時よりもこの部屋で見るほうがきれいだった。指のさきで、ぼくの耳たぶを撫で撫でしはじめた。「ママのかわいい黒パンサーさん、逃げちゃだめよ。あたしは下へ行ってコーヒーをメイクしてくるね・・」と言うと、下りていった。

 ぼくは思った、「よーし、お金のために彼女をクラックするんだ。最低でもCノートはかたいな。まず、Cノートなら悪くないよな。もっとクラックするけどさ。もし、おちんちんちんにむしゃぶりついてきたら、ベッドに縛り付けてペッパー仕込みのセックスだ。こんな天国でずっと暮らしてきた女、あんなの体験したことないでしょ。フリップさせまくりだな。しかしながら、キャノピーがあるベッドなんて初めてだ。すごいなキャノピー。しかも、天国にあるキャノピーかあ。いいな、いいな」

投稿者 Dada : July 19, 2005 06:00 PM