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July 13, 2005

MELODY OFF KEY 2

 ベッドに腰かけてベーコンと卵をたいらげた。気分がよくなってきた。もっとハイになりたくなってきた。すべてはコカイン・バンギンのための前座にすぎない。ネクタイの端を歯で噛みながら、腕にきつく巻き付けた。最初の注射でぐるんぐるんにキマりはじめた。《トップ》の真似をして、ゆっくり引き抜いてみた。気持ち悪くなった。便器に吐いた。だが、キマりっぷりは《トップ》の部屋のときよりもいい感じだった。

「もし魔法のように、ぼくの顔が黒から白に変わったらどうなるかな。へへ、ホテルの正面玄関から出て行って、鉄条網で囲まれた向こう側の世界へも忍び込むことだろう。羊の群れの中にまぎれたオオカミみたいに。白人どもは、ぼくが黒人だということに気付かない。あいつら全員に仕返ししてやる、口のきけない看守、初犯のぼくを刑務所にぶち込んだ白いブルドッグみたいな裁判長。この黒い地獄を抜け出しさえすれば、そこには幸せが待っている。ああ、ニガ、おまえはたしかに男前だよ。でも、おまえを白人にするブリーチ・クリームなんて、永遠に発明されないだろう。だから、ピンプしまくれ。ピンプしまくった分だけ、偉大な人間になれる。じっとしてたら、醜いニガになるだけだ・・」

 服を着て、顔にパウダーした。鏡に映っているのはハンサムな男。トレイを這うゴキブリを見た。さっさと廊下にトレイを出した。

「向かいの部屋のビッチを狙っていこう。顔に傷のある監視男のほうは、うちのチビをおとりに使って攪乱しよう。じゃ、散歩にいこっと。2人目の娼婦はすぐに手に入るだろう。なんかラッキーなことがありそうだ!」

 マリファナの缶を手に取り、他のシズルといっしょに紙袋に入れた。ドアに鍵をかけたら、エレベーターへ。途中、掃除道具入れの前で足を止めた。鍵はかかっていない。ぼくは、紙袋を棚のがらくたの奥に押し込んだ。

 コカインのおかげで、すごくいい感じだった。エレベーターが2階に止まっている。階段を使った。デスクに鍵を放り投げ、ストリートへ飛びだした。足に翼が生えたみたいだ。クールすぎて、息が止まりそうなほど、完璧な気分といったところ。気温25度くらい。コートはいらなかったかもしれない。

投稿者 Dada : July 13, 2005 06:15 PM