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July 22, 2005

MELODY OFF KEY 10

「ブラッド、世界でもっとも有名な建造物の柱には、欠陥があることを知っているかしら。パルテノン神殿の話よ。その欠陥は、《エンタシス》と呼ばれてるの。それは、人間の目から見て完璧に見えるよう、必要とされているものなの。あたしは、この柱みたいなものなのよ。あたしは古くないし、美しいだけなのに。あたしの悲劇はね、あたしにも《エンタシス》があるということ。しかも、本物の《エンタシス》が完璧さのために存在するのに、あたしのは、完璧さを隠してしまうの。意味わかりますか?」

 こう思った、「ハ? どういうこと? ようするに、こいつのメンコは変な風になってるのかな。ヨコになってるとか? もし、そうだとしても、オマケみたいなものさ。こんなに可愛い女なんだから、ピンピンして娼婦にしたところで、ちょっとした違いなんか、客は気が付かないでしょ!」

 こう言った、「ベイビー、メロディ、まだ何もしてないんだ。きみみたいに可愛いひとだったら、頭が二つあっても何も問題ないよ。さあ、ベッドに仰向けに寝て。黒いパンサー・スタイルの愛を教えてあげるよ。長いタオルとかもってる?」

 彼女は、廊下へ出て、クローゼットへ行くと、長くて細いのを手渡してくれた。赤いトップスと黒いパンティを脱ぎ、ベッドによこたわった。ぼくは、彼女の「欠陥」に目をやった。どこが《エンタシス》? 陰毛はなかった。つるつるしてた。ぼくは、両足をベッドの足に縛りつけてやった。左手を頭のほうへ。そのとき、電話の音。彼女が、右手で受話器をとった。

「ハイ、お母さん。元気よ。お父さんと楽しんでるの? ママ、早くふたりに会いたいよ。予定通り、明日帰ってくるの? よかった。時間通りに空港へ行くから。もう寝るところ。『アフリカ・アンソロジー』を読んでいたところなの。ワトゥーシ族の戦士について調べてたら、興奮しちゃったわ。おやすみ、お母さん。オー、パパにマイアミのビーチでいいお洋服をゲットして来てって伝えといて。この夏、地元のビーチに旋風を巻き起こしたいから・・!」

 ぼくは、せっせと自分の服を脱いだ。彼女が電話を切った。自由になった右手をさっそく縛りつけた。そして、見下ろした。相手の目が訴えかけている。

「ねえ、ブラッド、忘れないで。あなたは田舎者じゃないわよね。こんなことでショックを受けるようなひとじゃないはずよ。あたしの体の他の部分と同じように、あたしの《エンタシス》をスウィートに受け入れてくれるわよね!」

投稿者 Dada : July 22, 2005 06:00 PM