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July 12, 2005

MELODY OFF KEY 1

 けたたましい電話の音で目が覚めた。部屋の中は地獄のように暗い。ぼくはビッチごしに手をのばした。彼女はいなかった。受話器を耳に押し当てる。

「もしもし、こちらメアリーのブラザーです」

 男の声だった、「メアリーと話したい。だしてくれ」

「いま、いない。散歩に行っているんだろう」

 切れた。ベッドの脇に置かれた電話に受話器をもどした。灯りをつける。時計を見てみた。夕方の7時半。ぼくは、本当にビッチを窓から投げたのかもしれない。

 体を起こし、クローゼットを見た。彼女の服をまだそこにある。ドレッサーへ。40ドルを数えてみた。2枚減っている。金のそばに、メモがあった。

 こう書いてあった、「ダディ、2ドルもっていきます。一生懸命、仕事をしてくるからね。どうか、もうちょっとだけビッチに優しくしてください、ハ?」

 ぼくは思った、「むむむ、ピンプの本質に、少しだけ近付いた気がする。冷たくすればするほど、ビッチは男にすり寄ってくる。四日後、《グラス・トップ》さんの紹介で《スウィート》と仲良くなれたら最高だ。ぼくがコカインをキメていることを、ビッチに気付かれないようにしよう。ああ、腹が減った。またキメるまえに、何か食べよう」

 電話をとり、ロビーのプロレスラーみたいな女へかけた。

 ぼくは言った、「ベーコンと卵ある?」

 彼女は言った、「ちょっと待って。サイラスと替わるから」

 マギー&ジグスのマンガばっかり読んでた男がでてきた、「なんでしょう?」

「サイラス、ベーコンと卵を食べたいんだ、あと、トースト」

「わかりました、通りの向かいに食堂があるから、あっしが注文してきます」

 電話を切り、ふたたびクローゼットへ。双眼鏡を手にとった。窓辺へ。おじさんが通りを渡って《ビジー・ビー・カフェ》という食堂へ歩いていく。

 ビッチを探して、視線を上下させた。見つからない。また食堂を見てみると、ビッチがカウンターでコーヒーを啜っていた。やがて、外へ出た。ちらりとこちらを見た。

 通りすぎる車に尻をふりながら、ストリートを下っていく。黒いキャデラックに乗った客がひっかかった。客が車を寄せる。ビッチが乗りこんだ。ぼくは、さっき電話をしてきた男だろうか、と思った。

 シャワーを浴びていると、ドアをノックする音がしたから、体を拭いた。タオルを腰に巻いた。ドアへ向かうとき、ドレッサーの上のマリファナの缶を手にとって鏡のうしろへ隠した。

 サイラスが廊下で《聖者が街へやってくる》を口笛で吹いている。ドアを開けてやった。食べ物をのせたトレイを手にしていた。受け取ると、ひらひらと紙ナプキンが床に落ちた。彼がひろった。

 そのとき、向かいの部屋からかわいらしい黄色の女がでてきた。大きな茶色い瞳をのぞきこむ。彼女の前を、顔に傷のある、《悪魔のねぐら》でサックスを吹いていた男が歩いていく。脇に楽器のケースを抱えていた。

 女は、ぼくに、きらきらした視線を送ってきた。すぐに、タオルの下のチンコも見てきた。彼女の、いたずらっぽい熱い微笑みがこう言っていた、「おねがい、サイズを試させて・・」

 頭蓋骨に彼女のこと刻みこんだ。サイラスは、尻を浮かせてホールへと降りていく彼女からようやく目を離した。紙ナプキンをくしゃくしゃに丸めた。

 彼が言った、「1ドルです」

 ぼくは、ドレッサーの上にトレイを置いた。3ドルとってきて彼に渡した。

 ぼくは言った、「サイラス、ミスター・ハイドが連れてた女、いい感じだよね、どんなコなの、教えてよ、ハ?」

 彼は言った、「イェー、あのコは神父様でも聖書をほったらかして欲情してしまうようなイイ体をしてますよ。あのラッパ吹きの男と、ここ数年、一緒に暮らしているんです。野郎は、ぷ〜んと漂うあそこの香りにすっかりまいってしまってるんですよ。じつは、彼女は以前に娼婦だったみたいで。
 野郎は、それが心配なんですよ。自分の目の届かないところへはやりたがらないんです。どこのクラブで演奏するにしても、女を連れていくんです。もしあと30才も若ければ、あっしが盗んでやるんですがね・・。
 だんな、2ドルもありがとうございます。また何か必要になったら、年寄りのサイラスを呼んで下さいまし。食べ終わったら、ドアの外にトレイを置いておいて下さいな」

投稿者 Dada : July 12, 2005 06:45 PM