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July 27, 2005

GRINNING SLIM 3

《グラス・トップ》は、エナメルみたいな髪をなでつけた。青のモヘアのジャケットの中で、がっしりとした肩をいからせている。かわいらしい、ビッチのような顔に、傲慢なプライドを浮かべている。殺した女の返り血を一度も浴びたことがない殺人鬼みたいだ。フロントガラスごしに射しこむ満月の光が、そんな彼の表情を明るく照らした。

「キッド、おまえはまだ、何もわかってないな。まったくよ、俺は3人の娼婦を発狂させたんだぜ。北部の精神病院じゃ、今ごろあいつら《かわいい色男のグラス・トップ》のことをぶつぶつ口にしてるだろうよ。《スウィート》ですら2人しか病院送りにしてないんだ。俺より2倍のピンピン・キャリアがある男ですら、俺にはかなわない」

「うーん、《トップ》、わからないな。まだ金を稼げる娼婦を、なんで病院送りになんかしちゃうんだい。頭蓋骨が正気のビッチを狂わせてしまうなんて、どこまで悪いんだよ。どうして、そんなことができるんだよ」

「アホ、おまえに理解できないことをいちいち説明してたら、このキャデラックより巨大な本が書けるぜ。いいか、《スウィート》の話をしよう、あいつが処刑した女は、ふたりともホーになりたての白人女だった。あの野郎は、頭がおかしいからさ。白人ときたら、憎むことしかない。
 初めて白人があいつの頭蓋骨に毒を注いだのは、《スウィート》が7才のころ、南部のジョージアでのことだった。あいつのママは、まっ黒な黒人。美しかったそうだ。1マイル四方の白人男どもは、みんなヤリたがってた。ママが水くみに行く途中、あいつのパパが働いていた大規模なプランテーションの馬鹿息子が、待ち伏せしてたのさ。ママを殴り飛ばし、服を切り裂き、レイプしたんだ。家に帰ってきたとき、素っ裸で泣いていたらしい。
 馬鹿息子は、森に逃げこんだ。《スウィート》のパパは、農園から帰ってくるとママがボロボロになってるのを見た。パパは2メートル以上の大男だった。その親父も発狂して、小屋のドアに頭をがんがん打ちつける姿を、《スウィート》はよく覚えていると言っていた。ドアのヒンジが壊れたそうだ。
 あいつのパパは、キツネみたいに森をよく知っていた。白人の馬鹿息子を発見して殺した。茂みに死体を隠した。そして戻ってきた。《スウィート》が見たのは、裸足の足の裏まで血まみれになったパパだった。誰もいない森の中で、パパは馬鹿息子が、ぺらぺらの肉の塊になるまで踏みつけたんだ。パパは、じぶんが捕まることはないと思っていた。深い森の中だから、死体があがることはないと思っていたんだ。体を洗い、ドアを直して黙っていた。
 ところが、馬鹿息子は生きていた。ぼこぼこにされ、意識を失っていただけだったんだ。その夜、犬を連れて森を歩いていた白人に発見された。気を失っていたが、0時すぎには、何が起きたのかが周囲に知れた。
《スウィート》は、馬に乗って小屋へ襲撃に来たモブの声を今でも覚えているという。あいつは、屋根裏へ隠れた。そして、下でパパが叩きのめされ、引きずり回され、ママが全員に犯されるのを見ていた。
 全てが終わり、聞こえるのはベッドですすり泣いているママの声だけになった。あいつは、そっと下へ降りてきた。ドアの外へ出てみると、月明かりの下、桃の木に吊されてスウィングしているパパの死体があった。
 ママは精神病院へ。《スウィート》はプランテーションの小作人に引き取られた。17才になるまで働いていたそうだ。そして、逃げた。列車で北へ。最初のホーを手にしたとき、18才になっていた。白人の女だったそうだ。19になる前に、その女は自殺したそうだ。そんなあいつも、もう60才になる」

投稿者 Dada : July 27, 2005 06:50 PM