« MELODY OFF KEY 11 | メイン | GRINNING SLIM 2 »

July 25, 2005

GRINNING SLIM 1

 目をあけた。正午の太陽の光る柱をとおして、黄金のハリケーンのように渦を巻きながらキラキラと舞う埃。開けっぱなしになっているベッドルームのドアのほうを見た。チビのビッチがリビングの窓辺に腰かけて爪を切っている。彼女が、目をあげてこちらを見た。ベッドルームを覗き込んでいた。

「おはよう、淫乱な子犬さん。サイラスを呼んで、通りの向かいの店でハムと卵を買ってきてもらおうと思うんだけど、お腹へってる?」

「うん、お腹ぺこぺこ。でも、あのおじさんのスピードだと、もってくるのに1週間かかっちゃうよ。何か着て、あたしが行ってくるよ!」

 クローゼットへ行き、青いポップリンのウィンドブレーカーを羽織っている。ドレッサーから5ドル取り、ぼくに許可を求めるようにひらひらさせた。ぼくは、頷いた。ドアをぴしゃりと閉める音がし、彼女は外へ出た。

 ぼくは、煙草に火を点けた。こう思っていた、「メロディの野郎、血まなこになってぼくを探してたりして。《グラス・トップ》が《スウィート》の家へ連れてってくれるまで、あと1日くらいなのに。ほとぼりを冷まさないと。今日は部屋でじっとしていよう。《トップ》から電話があるまで、外出禁止!」

 ビッチがベッドルームへ入ってくるのとほぼ同時に、電話が鳴った。彼女はワックスペーパーで包んだトレイをドレッサーの上に置くと、受話器を取った。ぼくは起きあがり、じぶんの分を、プラスチックのフォークで食べはじめた。

「もしもし、ああ、チャック。どうしてるの、スウィーティ。あなたのこと、考えてたところだったの。え、ムリ。うん、飲みに行きたいんだけど。6時にならないと、ブラザーが仕事から帰ってこないの。ママの具合もよくないし。昼間は、彼女の世話をしないといけないんだ。7時すぎには出られると思うから。うん、8時にはセックスできるよ。20ドルね! じゃ、バイバイ〜、青い目のシュガー!」

 電話を切ると、上着をかけた。裸になって、ごはんを食べはじめた。

「ビッチ、おまえのあそこなんだけど、いいアイディアが浮かんだよ。毛の硬いブラシを買ってきて、暇さえあれば、あそこの毛をこするんだ。高さ10センチ以上の円錐形になるまで、何度もやるんだ。客は興奮して、顔をうずめてくると思うぜ。3次元のあそこの誕生だ・・!」

「ジャジーなアイディアですね! どうしたらそんなこと思いつくの?」

 口をもぐもぐさせながらビッチが言った。

「ビッチ、ぼくは偉大なイマジネーションのピンプだぜ? 」

 彼女はパンケーキを食べ終えると、腕いっぱいに、ぼくらの汚れた服をかき集め、バスルームへ行った。ばしゃばしゃと音がする。洗濯してるんだ。ぼくは、日射しに背を向けた。眠りの神モルフェウスが、まぶたにヴェルベットの杖をふりおろした。

 暗闇の中で目がさめた。通りに面した窓に目をやると、ストリートの街灯が点灯している。ナイトスタンドの照明をオンにした。時計は7時半だった。ビッチは外出していた。チャックとかいう客からスタートしたんだろう。

(いやはや、疲れてたんだな。この街に来てから色々動きすぎて、疲れがたまってたのかもしれない・・)

 体を起こし、バスルームへ行き、歯を磨きはじめた。何回かごしごしやったら、電話が鳴った。受話器を取ると、こちらが口をきく前に向こうから喋りはじめた、

『キッド、《グラス・トップ》だ。プラン変更。急いでるんだ。15分以内に下へ降りてくるんだ。わかったな?』

「あ、ああ、いいけど・・」

 切れた。オカマの部屋のときよりも速攻で着替え、廊下へ出た。掃除用具入れの隅にシズルを隠すことを忘れなかった。階段を2段飛ばしで降り、デスクに鍵を投げつけ、ぼくはホテルのドアを蹴り開けたのだった。

投稿者 Dada : July 25, 2005 06:15 PM