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July 09, 2005

DRILLING FOR OIL 17

 彼は、ぼくの話を真剣に聞いていた。やがて、女みたいなあたまをのけぞらせて、ソファから床へ転がり落ちた。肘を腹に当てて大笑いしている。人類史上もっとも笑えるジョークを聞いたみたいだった。おさまったとき、ハァハァと喘いでいた。髪の毛を手で押さえている。

「《スウィート》は、そんなに危ない奴じゃねえよ、馬鹿」 彼は言った、

「黄色いニガしか殺したことないしさ。この2年くらい、一人も殺してない。危険度90%といったところさ。中傷されたり、ホーにちょっかい出されたりしないかぎり、簡単に殺しをやるような男じゃない。
 勿論、白人どもを憎んでいる。白人のホーには、激しくタイトにピンプするんだ。白人のホーの尻に蹴りを入れるとき、白人全員に対してやってるつもりなんだ。あいつらが黒人に対してやったことのお返しだ、とかよく言ってるよ。頭蓋骨の中は、憎しみで腐りそうになってる。
 あのな、彼は、おまえのことなんて覚えてないよ。ホーとの肉体関係を断られたからといって、あいつは何にも感じてない。白人のホーにじぶんの強さを示すために怒ったんだ。ホーには、じぶんが神であるかのように思わせてるからな。神にノーといっても怒ったりしないだろ。そんなこと、デラウェアから出てきたばかりのカタギでも知ってるよ。
 いいこと教えてやる。週末、あいつに届け物があるんだ。時間が決まったら、おまえの部屋に連絡してやるよ。途中でピック・アップするから、一緒に《スウィート》の家へ行こう。あいつは醜くて口の悪い、ただのニガさ」

 ぼくは言った、「420号室にランカスターという名前で泊まってるよ。あのさ、ちょっと間抜けなこと言ったかもしれないけど、勘弁してくれ。暗闇で誰かが通りかかるのを待ってる子供、だって言っただろ。ぼくのコートをプルしてくれてありがとう。また、あとでね!」

「わかったよ。すぐ捨てられるよう、シズルは手の中に入れとけ。あと、ドラッグ・ストアで針を買って帰りな。インシュリンも買えよ!」

 玄関へ歩いていった。鏡を見ながら、スポンジを顔に軽くはたいた。エレベーターへ。1階まで降り、ドアが開いた。容赦のない朝の日射しにたじろいだ。

 舗道へ出ると、《グラス・トップ》の赤いキャデラックが大通りから入ってきた。フランクリン・アームズへ行っていた彼の5人のホーだ。

 ぼくは、フォードへ歩きながら考えた、「いやーヤバイ、一晩中働いて、5人で何千ドルも稼いでいるわけか。あの部屋に住んでるのがぼくで、ホーの帰りを待ってても、ちっともおかしくない気がするよ!」

 夜の住人たちは、すっかりストリートから消えていた。出勤するカタギの人たちが、路面電車乗り場に列を作っていた。フォードに乗り込み、ヘイヴン・ホテルへUターンした。途中、終夜営業のドラッグ・ストアがあったから、駐車場に車を停めた。10ドルの双眼鏡を手にとってカウンターへ行き、インシュリンと針、目薬を注文した。インシュリンは、怪しまれないように買うわけ。5分後、ヘイヴン・ホテルへ到着した。

 アパートメントの窓を見上げた。カーテンが揺れている。カーテンを閉めるチビの暗い顔が浮かんだ。ロビーを抜け、エレベーターへ。《トップ》の部屋を見てしまったら、本当にみすぼらしい場所だった。

 エレベーターの中で、こんな風に思った、「もし、ビッチが早くも嫌気がさしていて、客を取りたくないとかゴネはじめたら、蹴ろう」

 4階で降り、420号室へ。タバコの缶に巻かれていたゴムをはずした。蓋を開け、じぶんのコカインのパケットを取り出した。アルミホイルに包まれ、小さなゴム風船の中に入れてあった。懐中時計用のポケットに移した。リーファーの上にころがっていた鎮静剤をつまみ、水なしで飲み込んだ。

 ドアをノックする。1分ほども待った。さらに強くノックした。ようやくチビが開けた。目をこすっている。ぐっすり眠っていたフリをしてる。彼女はベッドへジャンプした。ぼくに背中を向け、耳まで毛布をかぶった。

投稿者 Dada : July 9, 2005 06:00 PM