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July 05, 2005

DRILLING FOR OIL 13

 白人の女たちが、鳥みたいに首をのばして入り口を見た。鏡の左側へ目をやると、《グラス・トップ》が戻ってきた。女どもがざわめいた。

「ジャック、白人の女、ときどき怖くない? レイプされそうだよ」

「ハハ。あんな女を脱がして、体じゅうひっくり返しても、Cノートなんて1枚も出てこない。平凡な主婦なんだから。家庭での中途半端なセックスに飽きてるんだ。簡単にヤれるニガを、物色しているのさ。
 いいか、あいつらは、お互いの秘密はバラさないからな。旦那たちは、本当に起きていることを知らないんだ。万が一、知り合いの白人の男が来たらどうするか? 『ご近所のみんなで、スラムの見学に来てるの』とか言ってごまかすんだよ。ジャック、ようするに、秘密のセックス・クラブだよ」

「ハハ・・・。トップ、ところでさ。ぼく、へとへとなんだ。《ガール》をキメたいんだよね。どこかで手に入ったりする?」

「小僧、お疲れなんだろ。もちろん、いい話があるよ。そういうことは俺に聞いてくれ。《ガール》も《ボーイ》もこの街で最高のが手に入るから。リーファーもヤバイのがあるよ。なあ、ブラッド、おまえが気に入ったよ。ハートがあるからな。どのくらい欲しいんだ?」

「《ガール》、どのくらい?」

「5キャップが5ドル。16キャップが100ドルかな。だいたい、1オンスで1000ドルくらい。近所にいい感じの部屋を借りてるんだ。そこに行けば、月までぶっ飛べるぜ。来るかい、ピンプのおにーさん・・」

「是非。ホントにメロウなネタだったら、100ドルくらい買うよ!」

 また、5ドル札をカウンターへ投げた。メキシコ人の女のコが飛んできて、白い歯を見せた。まるで、ぼくが彼女の歯医者だというように。

 2人で外へ出て、《グラス・トップ》のキャデラックに乗りこんだ。ぼくの足が、ボトルを蹴っ飛ばした。ポイズンのホーが飲み乾したジンだった。車は赤いつむじ風のように大通りへ発進した。ビリー・エクスタインのシロップのような曲、《この小屋、売ります》がラジオから流れていた。

 こう思っていた、「もっと急いでピンピンしなくては。最低でもキャデラックは買わないとダメだ。1年以内に、デュッセンベルグを乗りまわさないと。あらら、もう1時半じゃないか・・。ビッチの様子を見てくるのを忘れてた。まあ、いいか。いま、流れは変わりつつある。このてかてか頭のジョーカーが、ぼくを《スウィート》まで連れて行ってくれる・・!」

 そして到着。《グラス・トップ》のアパートは、ぴかぴかだった。なんていうか、ジャズ。テクニカラーの光が、外壁を照らしていた。ロビーには、ゴムで造られた背の高いフェイクの植物が茂っている。

 クロームと真鍮のエレベーターをつかって2階へ。彼の部屋へ入った。分厚い赤の絨毯がびっしりと敷き詰められている。フレッシュな黒と金色の塗料が、壁と天井に塗られていた。

 鏡に囲まれた小さなエントランス・ホールで、ポリネシアンぽい美女がぼくのコートと帽子を受けとった。柔らかいラベンダーの絨毯に足が沈みこんだ。遠くから、コンソール音響マシンの心地よい音が聞こえてくる。インク・スポッツのリード・テナーが、《囁きのグラス》を歌っていた。

 トップとオリーヴ色の肌をした美女の案内で、子宮のようなリビングに通された。窓はヘヴィー・ラヴェンダーで装飾されている。ストリートの街灯も、太陽の光も、このピンプの部屋へ侵入することは許されていないのだった。

投稿者 Dada : July 5, 2005 06:25 PM