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July 04, 2005

DRILLING FOR OIL 12

 メキシコ人の女のコはグラスに砂糖をスプーンで入れ、コーラをもってきてくれた。《グラス・トップ》はストローで飲んだ。グラスを手で持ち上げている。ぼくは、彼の明るい茶色の手の静脈に、醜く黒い跡が続いていることに気が付いた。麻薬中毒にちがいなかった。つまり、どこでコカインをコップできるのかを知っているだろうし、たぶん大麻もあるだろう。しかも、《スウィート》の親友のひとりなんだから、ぼくは2つの用件を片づけられそうだ。

「それで、プレストンを知っているんだっけ。仕事は何をしてるんだ。コソ泥か強盗といったところかな。ハ?」

「子供のころからプレストンを知ってるんだ。彼がピンピンしてるころ、よく靴を磨いていたのさ。ぼくは、コソ泥でも強盗でもない。ピンプなんだ。あなたもピンプだよね、さっき、通りで最高のピンプと話しこんでいる姿を見たから」

「おまえが、ピンプ? 聞いたことないな。どこでピンピンしてるんだ。シベリアか? 言っておくが、《スウィート》は最高のピンプじゃない。最高のピンプは、俺なんだ。ピンプは、車と同じなのさ。いちばん有名な車が、いちばん性能がいい訳じゃない。俺がデュッセンベルグだとしたら、あいつはフォードみたいなものさ。質も美しさもこっちの方が上。だが、向こうのほうが広告を打ってるし、運も味方してるということ。
 あいつには、10人のホーがいる。俺は5人だ。この街のホーたちは、俺がどれだけ偉大かということに、まだ気が付いていない。もし、女どもが気が付いてしまったら、バットで女どもを追い払わないといけなくなる。それで、おまえには、何人のホーがいるんだ?」

「まだ、ひとりしかいないんだ。刑務所から出てきたばっかりでさ。あと1年で10人にはなると思う。この街は、ぼくの噂でもちきりになるよ。だから、《スウィート》みたいな偉大なピンプと友だちになりたくて。もっと何千回もピンピンして学ぶべきことがあるのは、知ってるからさ。そんなに馬鹿じゃないよ。それに、コカインと大麻のコネクションが欲しいんだ。現時点では、暗闇で誰かが通りかかるのを待ってる、子供みたいなものだね」

「まあ、まあ。熱くなるなよ、《ブラッド》。俺さ、ちょっとキャデラックのドアを開けっぱなしで来ちゃったんだ。ちとロックして戻ってくるわ」

 ぼくは、鏡ごしに彼が出ていくのを見ていた。左へ曲がり、ギリシア人の賭博場の方へ歩いて行った。プレストンのところへ、ぼくのことをチェックしに行っているな、と理解した。彼が出ていくとき、後ろのブースの白人女たちがいっせいに振り向いた。ケーリー・グラントじゃないんだから。

 ジューク・ボックスから、ブルース。誰だか知らないが、こんな風に歌っていた、「ゆっくり悪くなっている、医者は呼ばないでくれ、医者はもう良くならないことを知ってるから、ママに手紙を書いて、ぼくの状況を伝えてあげて、ゆっくり、ゆっくり、ぼくは悪くなっていると・・」

 思い出した。これは、親父がいちばん好きなレコードだったんだ。高級なヴィクトローラのプレーヤーでよくかけていた。家のドアを開けると、何もかもが消え失せていた日の顔をよく覚えている。親父はまだ生きているだろうか、と考えた。生きているのなら、シカゴにいるのだろうか。もし親父に会うことがあったとしても、伝える言葉なんてない。

投稿者 Dada : July 4, 2005 06:00 PM