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June 11, 2005

THE JUNGLE FAUNA 6

 ぼくは、ボトルを買うことができた。急いで注文したリブをピック・アップしに行く。プレストンの親父は通りへ戻って客引きをしていた。ちょうど一人の客を店内へ連れて行こうとしている。ためらう男のケツをビシャリと叩いている。カモは中へ入っていき、先輩はぼくを発見すると、よろよろと歩いてきた。そのとき、足が不自由なのを知った。ボトルを見せるとニヤリとした。

 言った、「ありがとよ、ボク。まず一口やんなよ」

 ぼくは、「ジャック、全部、飲んでいいよ。リブを受け取ってから博打場へ戻るから、そうしたら聞きたいことを《ラップ》してくれよ」

 店内へ戻ってみると、プレストンは具合の悪い足を椅子にのせていた。ぼくはソファのそばに置いてあった、彼が履き替えるためのサンダルに躓いた。腰かけた。彼の足は、まるで末期ガンに冒されているかのように酷い匂いがした。例えピンプの卵であっても、鋼鉄の胃をもっていなくてはいけない。ぼくはリブを袋から出してむしゃぶりついた。

 彼は言う、「そこの角でピンプの《ポイズン》が娼婦を吊しあげていたろう。彼はこの街で2番目のピンプだ」

 胡椒と脂でべとべとした口を拭いながら、「あの女、ぼくには死んだように見えたけどな。今ごろ死体安置所にチェック・インしてるかも。なんであの男は警官でありピンプでもあるんだい? あいつはかなり強力な感じがしたけど、それより上をいくピンプっていったい誰なんだ?」

 彼はボトルをぐびぐびと飲んでいる、「女は殺されちゃいねえよ。日が昇る前にむっくり起きあがってハンプしてるだろうよ。あの男はこの街のニガの警官のトップでもある。白人の客のケツを蹴っ飛ばしたりしないかぎり、お偉方はあいつのピンピンなんて、気にも留めてないのさ。それに、《スウィート・ジョーンズ》に比べれば、《ポイズン》なんて優しい男だぜ。《スウィート》はこの国のニガのピンプの頂点だからな」

 ぼくは、「プレストン、ぼくはその《スゥイート》みたいになりたいんだよ。その男のように有名になりたいんだ。100人の娼婦をピンピンして余りある程、駆け引きが上手くなりたいんだよ。なあ、《スウィート》に紹介してくれよ。本物に会わせてよ。そして、やるべきことを学ぶんだ」

 暗闇の中で、彼の黄色いあごがポカーンと開いたまま、ふさがらないのが見えた。バセット・ハウンドみたいな顔はよじれている。クイズを出されたみたいな驚きの表情だった。今からあんたのことぶん殴らせて、と突然ぼくに言われたかのように顔がジグ・ソーしていた。屍のようにソファに沈んでいる。

 こう言った、「ボク。どっかに頭をぶつけたか。それとも、ヘロインの打ちすぎかな。《スウィート》はな、一言で言えば、何百人ものキチガイを糸くずみたいにまとめて一人にしたみたいな男なんだよ。おまえの家のベルはそんなに大きな音で鳴らないよ。発狂しないと無理だ。あいつはチンコがでかいピンプを四人殺してるからな。もう人間じゃない。この街にいるニガ全員を、糞が出なくなるくらいビビらせてる。娼婦たちは彼のことを《ジョーンズさん》と呼んでいる。

 あいつはガキが大嫌いなんだよ。おまえを紹介するなんて死んでも出来るもんか。ボク。あんたのことは好きだ。男前だし、頭がよさそうだと思ったんだ。だから助言してやるんだ。それを素直に聞いて、こっから出て行きな。

 12年前、おれはこの街にやって来た。そりゃおまえなんか比べものにならないくらい可愛かったよ。ホーも5人いた。地元では地獄のピンプとして怖れられていたよ。まだ28才の若さだった。おまえさんと同じように、俺も《スウィート》に会わなくては、と思った。簡単な事だった。俺は黄色いニガで、見た目もいい感じだったから。白人の美しいビッチも3人いたからな。だが、じつは《スウィート》は黄色いニガと白人を憎んでいたんだよ。

 最初の1年間は、彼はニコニコ笑っていたよ。例の金歯を見せてな。俺のことを気に入ってると思わせてたんだ。もう、その頃からあいつは、完全なるジャンキーだった。やがて、俺を冷やかしはじめた。「素人」呼ばわりして馬鹿にするんだ。しょうがないから、こっちもハードなイキフンだしてこーと思ってさ、止めておけばいいのに、ヘロインにフックしてしまったんだよ。

 毎日のようにキメてたら、普通に頭がスクリュー・アップしてきて。とにかくヘロインをキメてぼーっとする以外、何にもやりたくなくなった。するとあいつは、まるで本当の友だちみたいに、俺の代わりに俺の娼婦どもを働かせるようになった。はじめのうちは、女どもから見れば「スウィートの叔父さん」という感じの立場だったが、6週間もすると、俺にも女どもにも命令するようになった。そして女のまえで俺をぼろ糞に言って、恥をかかせるんだ。どっちが上かってことをハッキリさせてくる。そして、女を奪われた。

 ある朝、俺はありえないくらい麻薬中毒になっていた。《スウィート》が酷い嫌がらせをしてきたんだよ。持ってくるはずのネタを24時間も待たせるんだ。死ぬほど体が冷たくなり、毛布にくるまってがたがた震えていた。と思ったら、次は熱くてしょうがない。ようやくあいつが到着したとき、俺は裸になり、床でクロールしていた。体中を引っ掻いて血まみれだった。そんな俺を見下ろしながら、金歯を見せてこう言ったんだ、

『おっと、ごめんな、可愛らしい黄色のマヌケくん。さぞかしタイヘンだったろう。今朝までネタが全ッ然手に入らなくて。メキシコまで行ってようやくコップしてきたよ。まー、おまえみたいなジャンキーの尻の穴に、首を突っ込んでも愉快、愉快なほど、おれはジャンキーのダチが好きだからさ、、、。あれ、何だよそれ、おまえ、テンパるとおれと同じくらい黒くなるな(笑)。おまえの白人の親父に、この姿を見せてやりたいよ。真っ黒なニガの俺に、膝をついて助けを求めてる、黄色いニガの姿をよー、、、』

 そして彼は、小さなセロファンの包みをとりだした。だが、俺はそれを受け取ることも出来ないほどヘロヘロだったんだ。

 こう言った、『スウィート、悪いんだけど、そいつを溶かして注射してくれないか。クローゼットの中にあるキャンディ・ストライプのネクタイの内側に注射器が入ってる。マジでお願いします、死にそうなんだよ』

 俺は痛みと痙攣のかたまりだった。なのに、あいつはクローゼットまですごくゆっくり歩いていくんだ。わざと正解のネクタイをファンブルするんだ。黄色いニガをとことん苦しめるために、じわじわ蹴りを入れてくるんだよ。

 俺は叫んだ、『スウィート! それでいいんだって! あってる、あってる、そのネクタイをとってくれ! それでいいんだよ!』

 スウィートは、やっとネクタイから注射器を取り出した。彼がネタを溶かしても、俺には打つだけの力も残っていなかった。絨毯の上に腕をだらりと置いた。たのむからヒットしてくれと目で訴えたんだ。

 彼は、椅子の上にあった俺のベルトを拾いあげ、腕を持ちあげると、ひじの上を縛りあげた。血管が青い紐のように浮きでた。針を突き刺した。ガラス管に赤い血が混じっていった。俺は、ただただヘロインが狂った精神と痛みを癒してくれるのを待ちながら、死んだように凍りついていた、、、」

投稿者 Dada : June 11, 2005 06:45 PM