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June 10, 2005

THE JUNGLE FAUNA 5

 女たちの顔は、フロアの赤い闇の中で発光しているみたいだった。頭を後ろへ振るたびにながい髪の毛が踊った。その淫乱さは、熱帯雨林の動物たちを思わせた。酔っ払って大笑いしながらニガの男たちに寄り添っている。

 そこで覗くのを止めた。プレストンのボトルを買うために歩きだした。彼の話が終わったら《悪魔のねぐら》をチェックしよう、とじぶんの頭蓋骨にメモしながら。角から50フィートほどのところで、その男を見た。彼は小さな人だかりの真ん中にいた。背の高い王冠のような白い帽子が、まわりの人間の上に飛びだしていた。その男は褐色の肌をした大男だった。

 近寄っていくと男の白い歯が見えた。分厚い唇は怒りのせいでめくれ上がっていた。がっしりとした肩が揺れている。男は何かをストンプしているようだ。まるでファイアー・ダンサーか、シシリー島の葡萄踏みのようだった。

 ぼくは人だかりを押しのけてリングサイドの特等席へでた。彼は文句を言っている。あまりにも必死になって動いているために汗だくだった。人々はくすくす笑い、エキサイトしていた。まるで魔女の処刑を眺めるセイラムの街の群衆のようだった。ここにいる魔女は、黒人女だった。吊り上がった目と人形のような顔立ち、ゲイシャ・ガールみたいだった。

 突然、冷たいつむじ風が吹き、男のコートの裾がはためいた。巨大な太ももの筋肉が200ドルはするだろうスーツの内側で波打っている。何度も何度も力をこめて男は13サイズの靴で魔女の腹や胸ぐらを踏みつけていた。

 女は完全に気絶していた。あごのつなぎ目がねじ曲がり、赤いぶくぶくとした泡が口の角に溜まっていた。遂に男は舗道から女を抱きおこした。腕の中で、女はまるで子供みたいに見えた。男の目は奇妙なことに失望している。彼は人だかりを裂いて大通りに停めた紫色のキャデラックへと歩きだした。意識を失った女の顔を見下ろしている。そして低い声でぶつぶつと言った、「ベイビィ、なんでだよ、なんで俺にこういうことさせるんだよ、なんで一生懸命ハンプしないんだよ、どうして客と酒ばっかり飲んでくちゃくちゃお喋りしてんだよ・・」

 女を優しく抱いたまま、彼は前かがみになってキャデラックのドアを開けた。フロント・シートに寝かせ、ドアを閉めると、運転席へまわった。乗り込むと車は叫び声をあげて夜の闇へと消えていった。

 群衆は散り散りになった。ぼくはじぶんと同い年くらいの男の方を見た。目が虚ろだった。《ギャングスター》をしゃぶってるんだ。

 ぼくは言った、「あのおっさん、警官が通りかかったら間違いなく捕まってたな」・・・彼は後戻りしてきてこちらを見た。まるでぼくがたった今チベットの修道院から到着したばかりの馬鹿だというように。

 彼は言った、「おまえみたいなのを、リップ・ヴァン・ウィンクルっていうんだろうな。はじめて見た。あのな、あの男が警官なんだよ。風俗取り締まり係。みんな《ポイズン》て呼んでるよ。9人のホーがいるんだ。あいつはピンプなんだよ。さっきの女はその一人さ。客と酔いつぶれてたんだ」

 ぼくは、酒屋へ入っていった。0時5分だった。半パイントを注文した。店主がカウンターに置いた。尻のポケットに入れた財布をとりだすためにコートを翻した。五ドル札と十ドル札で二百ドル入れてあった。パンツの内側のチンコのあたりに五枚の《Cノート》を煙草の箱に入れてピンで留めてあった。

 指がポケットの底に触れた。右のポケットは空だった。財布はこっち側に入れてあることは、よく分かっている。左手を左のポケットに突っ込んだ。こっちも空っぽなんだ! それから数秒間、冷や汗でべっとりとなった両手をポケットというポケットに半ダース回も突っ込んで探しまくった。

 店主は、ただ立ってこのショーを愉快そうに眺めていた。毛深い手で半パイントのボトルを安全な場所へ引き寄せている。彼は言った、「どうしたんだよ、兄弟。どっかのホーにぶつかってスラれたのかな。或いは別のパンツに入れっぱなしになってるとか?」・・・ぼくの心は、フェレットのようにちょこまかと動き回った。ペダルを後ろに漕ぎ、じぶんの行動をひとつひとつ分け、チェックしていこうとする。けれども頭がジャジー・パンクの混乱状態なんだ。

 ぼくは言った、「ジャック、ふざけんなよ。どっちも不正解さ。カモにされるよーな馬鹿じゃねーよ。思い出した。金は火星に置き忘れたんだった。ちょっと取ってきます」・・・店の外へ出るとき、店主が頭を振っていた。通りを渡る。真っ直ぐフォードへ向かった。シートに財布が落ちてないか探すためじゃない。チンコの横にピンしてある《Cノート》を取り出すためだった。

 あのハイプなバーへ入ったときのことを思い出していた。ガラガラヘビ野郎が牙を剥いた瞬間をもう一度、思い浮かべた。コップを成功させたあと、馬みたいな男の顔に浮かんだスリルと笑い。自称仕立て屋のキツネ男に、金玉をがっちりニギられてるあいだにヤラレたんだな。

 こう思った、「あの糞ったれの二人組くらい狡猾だったら、大金持ちになるかぶっ殺されるかのどっちかだろうな・・・」

 あれから三十年になるが、いいかい、ぼくは、あの日以来、財布に金を入れたことはない。絶対に入れない。

投稿者 Dada : June 10, 2005 11:05 AM