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June 07, 2005

THE JUNGLE FAUNA 2

 エンジンをかけ、サーチ・ライトを点灯した。雪は降り止んでいた。光の中に這いつくばった娼婦の姿があった。ドラキュラのような顔をした女はドブを覗きこんでいる。こちらを見て、眩しそうに、まるでプレミア試写会の新人女優みたいに微笑んだ口には、歯がなかった。

 エンジンを思いきりふかした。女は脚を大きく広げて立ち上がる。彼女の股間はぱっくりと真っ赤な裂け目を開けていた。汚れたひじでドレスの前すそを持ち上げている。長く黒い指を突き上げ、ぼくに止まるよう言っている。

 一気に通り過ぎるとき、女は叫んだ、「戻ってきなよ! ニガ! 1ドル払えってんだよッ!」

 雪の溶けだしたストリートを運転していく。暗黒の中に街灯が青い光の輪を描いていた。ぼくは思った、「こんな場所に、おれのおチビちゃんを立たせるわけにはいかねー、、誰かもっとこの街に詳しい奴を捜さないと、、」

 何百ブロックも走り続けた。すると突然、陰湿な空気を切り裂いて巨大な赤いネオンが発光した。《悪魔のねぐら》と読める。そこはさっきのバーでデブの女がおしえてくれたスポットの一つだった。

 キャデラックやリンカーンがずらりと駐車されていた。《ねぐら》に面した駐車スペースはびっしりと埋まっていてる。ぼくは車を停めるために通りを横切った。そこにフォードを止め、また通りを渡った。

 そして《ねぐら》へと歩きだした。《鳥》ことチャーリー・パーカー、エクスタイン、サラなどのソウルフルなサウンドの狂騒的なメドレーが、たくさんのデリから響いてくる。周囲は黒人たちの蟻の巣みたいに忙しかった。チンピラと女たちが先の尖った服を着て、このブロックをパレードしていた。

 ヒッコリーの煙で燻したチキンやリブの匂いで涎が止まらなかった。そして一軒の店の前で足が止まった。看板には《クレオール・ファットのリブ天国》とある。意味がわからなかった。

 目の前に、長くねじれた人影が落ちていた。彼はヴードゥーの呪術師みたいにぼくに歌いかけた。店先を指差している。そこは青いペンキで塗りつぶされていた、「いい感じ、ちょー重たい感じ、キメてみ、やばい、森から切り出した薪みたいに、金が積まれてる、ちょー、やばいって、あんた、ラッキーなんだって、ジャック、7、11の黒でしょ、それで間違いなく勝てるんだ、早くしたほうがいいって、早くしろって、幸運のビッチ逃げるから」

 そいつのよれよれコートは緑のチェック。シャビィな黒い靴は左右さかさまに履いていた。目ん玉が眼孔からハンプしてる。違法ゴミ収集業者のゴミバケツみたいに臭い男。だが、バセット・ハウンドに似たバナナっぽい黄色のお化けっぽい顔には、どこか見覚えがあった、、。

投稿者 Dada : June 7, 2005 06:30 PM