« THE JUNGLE FAUNA 10 | メイン | THE JUNGLE FAUNA 12 »

June 17, 2005

THE JUNGLE FAUNA 11

 男は席を立った。拳でカウンターをコツコツとやると、さっきのメキシコ人の女がやってきた。女は男の目の前に立って、微笑んでいる。もうひとりの男もグラスを飲みほし、立ちあがった。彼女のおっぱいの谷間を、じろじろと鑑賞している。ぼくは、これらの動きを目の片すみで追っていた。

「ふたりで12ドル。あなたが7ドルで、お友だちは5ドル」

 娼婦を買ったほうの男が、「はい、20ドル。俺が払うよ。お姉さん、お釣りはとっといてよ。美味しそうだな、お姉さん。きのうの夜から働きはじめたんだよな? あんたを連れて来た浮浪者は、誰だったんだ。お父さん? それにしても、美味しそう。塩、胡椒して、食べちゃってもいいかな?」

「お父さんじゃないし、夫でもないの。しかも、浮浪者じゃなくて、作業着だっただけ。あと、人間を食べるのはやめて。あたしなんか、食べても美味しくないし。チップをありがとう、また来てね・・・」

 男は鼻先を天井にむけて大笑いした。灰色がかった白い粉が鼻毛にくっついている。いつのまにかヘロインをキメてぶちギマッてたみたいだ。

 女は、まだ微笑んでいた。大きな黒い瞳には、ラテン系らしい怒りが宿っている。レジへ向かって歩いていく。パンチして、戻って来た。男を見て立った。5ドル札1枚と1ドル札3枚を握っていた。それらを石ころみたいにくしゃくしゃに丸めた。鏡ごしに、もう片方の男がドアから出ていくのが見えた。

 娼婦を買ったほうの男は、まるでその8ドルで彼女を購入する権利を得たかのようだった。じぶんの股間のあたりを愛撫している。指にはめた4カラットの石がネオンのように光った。

「あのヘチャムクレが、あんたの彼氏だというなら、俺はあんたを盗む。今すぐ拉致してもいいんだ。こんなところで働いてるような女じゃない。ビッチ、毛深い足のあいだには《ミント》が眠ってる。1週間で1000ドル稼ぐことなんて簡単なんだ。教えてあげるよ。俺は欲しいものを必ず手に入れるタイプのニガなんだ。ビッチ、おまえを誘拐する。4時に迎えに来るよ・・・」

 このとき、まっ黒な船の積み荷のような男があらわれた。まるで狂犬病のブルドッグみたいな顔だった。こいつは、店の用心棒に違いなかった。男のうしろ、数フィート離れたところに立って、飢えたワニのようにニヤニヤしていた。肩を怒らせている。メキシコ人の女はがたがた震えだし、さっき丸めた金を投げた。男の鼻先にぶつかった。おもわず、顔に手をやった。

 女が叫んだ、「馬鹿で、ブサイクなヤツ! 狂ってんじゃないの? あんたなんかに体を触らせると思ってるの? あんたのベトベトな人生のために、なんであたしが働くのよ? もうこっちを見ないで、心臓えぐりだすよ!」

 のっし、のっしと用心棒が近付いてきた。靴の底から、木の床を走る急行列車の車輪のようにクリケテッィな音がクラックした。男のコートの裾のすきまから手を入れ、お尻を掴んだ。もう片方の巨大な手で首を掴み、ひねりあげている。男はふわりと浮いていた。ドアまで引きずられながら、爪先でタップ・ダンスを踊っていた。《悪魔のねぐら》は静まりかえった。男は首をねじって、まだ怒りがおさまらない様子の女を、睨みつけていた。

 舗道へ放りだされる瞬間、叫んだ、「この、四角いお尻の、チリ・ソースまみれの、ベトベトの、ビッチ! 絶対3倍にして返してやる!」

 すると、フロアはふたたび大騒ぎになった。コンボは《ムード・インディゴ》のフレーズを開始した。

 ぼくは、じぶんの女のことを考えはじめた。メキシコ人の女は、尻に手をおいて、こちらを見ていた。あの男は最低だって、ぼくにも言って欲しいんだろう。こっちも同じ穴のムジナだということを、彼女は知らないんだ。

 2ドルおいて、店の外へでた。午前2時半をまわっていた。通りの角へ歩いていく。プレストンの言った通りだった。《ポイズン》の黒人の娼婦が、酒屋の前でビジネスをしていた。彼女は、ぼくに声をかけた。あれだけボコボコにされても、やっぱりホーとして通りに立ってしまうんだな。

「ハイ、スリム。10ドルとチンコちょーだい。ハンサムだから、急かしたりしないよ。酒でもコップして、ゆっくり、たっぷり、ねっちょりとフリーク・オフしよーよ・・・」

 ぼくは、メデューサの首から顔を背けるようにして、歩き去った。少しずつ足を速めて大通りを走って渡った。《ポイズン》の13号の靴がじぶんの尻にめりこむビジョンが、一瞬、浮かんだような気がした。

 フォードへ乗り込み、エンジンをかけ、Uターンする。チビの待っている部屋へ戻り、ちょっと眠らなくては。ヘッドライトが、プレストンの姿をとらえた。あのギリシア人をリッチにするために、彼はまだ働いているのだった。手を振っている。ぼくは、クラクションを鳴らした。

投稿者 Dada : June 17, 2005 06:45 PM