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June 29, 2005

DRILLING FOR OIL 8

「神様!仏様!ママ! ぼくの目玉(ダブル)が、あの女に色目(マッスル)を使ってるとか思われませんように! あの女から金(スクラッチ)を巻きあげるとか、あの女を盗む(スナッチ)とか勘違いされませんように! よろしくお願いします、ぼくを指差したりしないでくれ!」

《スウィート》は、恐ろしい視線をぼくから外した。カウンターにそっとグラスを置くのが見えた。メキシコ人の女店員が大急ぎで駆け寄る。何か話してるみたいだ。彼女は肯くと、ぼくのほうを見た。

 靴のかかとがスツールの足置きに当たり、フラメンコみたいに音が鳴りはじめた。ジューク・ボックスからビリー・ホリデイの歌が聴こえる。ヤリチン男への愛と憎しみの歌。ぼくは、もう一度、フィリスに会えるだろうかと考えた。彼女は、どれだけの早さで次の男を見つけるのだろう、とも。

 カップルたちが注目している。闘技場みたいだ。悲劇のキリスト教徒がぼく。そして、百獣の王。しかも、オセロットのオマケつき。メキシコ人の女のコが、ゆっくりと歩んできた。ぼくの前に立つと表情がこわばり、真剣になった。哀れみすら浮かんでいる。死刑宣告を言い渡す役なんて、ごめんなんだろう。

「ジョーンズさんが、すぐに来いと仰ってます・・」

 足がよろめいた。ぼくは、「ジョーンズさん」までの1000マイルを歩きはじめた。途中で、IQ175の脳をクリアにした。

《スウィート》の前まで来た。猫が足下でうなり声をあげた。黄色い瞳でぼくを一瞥する。ぼくは、猫をちらりと見ると、そのまま床に目を伏せてしまった。悪魔的なピンプの発光している目玉をのぞきこむなんて、怖くて無理。絶対、ズボンの中にウンコするな、とわかっていた。

 悪魔は、座ったままぐるりと回転し、カウンターにもたれた。ぼくの目は、針のように爪先が尖ったパテント・レザーの靴に釘付けになった。その巨大な手と手がバチンと衝突するたびに、ぼくはビビりまくっていた。

 そして囁いた、「ニガ、俺が誰だか知ってるだろ? 貴重なお言葉を聞くときは、ちゃんと俺の目を見なくちゃな・・・」

 ぼくの頭蓋骨の中の電報係が、こんな内容をメールしてきた。

『こいつは完っ全に危険。こういう、マニアックな状況のときは、ミシシッピのニガみたいに行動してこーよ。白人のリンチ集団のリーダーの前でチビりそうになってるマヌケの役でいいんだって。相手に信じこませるんだ。慎重に。いい感じにしなくていーから。ひたすら向こうのお尻の穴に鼻を押しつけておくんだ。ぺこぺこするんだ。それだって難しくない・・?』

投稿者 Dada : June 29, 2005 10:05 PM