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May 20, 2005

SALTY TRIP WITH PEPPER 10

 * * *

 配達のために、ドラッグ・ストアからでると、舗道で男にぶつかった。なつかしい《パーティー・タイム》だった。

 おれたちはマーフィーに失敗し、彼は刑務所に入っていたのだった。そのあいだ、文通していた孤独な女がいるのだという。彼女が汽車の金を出し、彼は刑期を終えると女を訪ね、結婚したそうだ。

 すぐに女は死んでしまい、家は親戚の手に渡り、彼は追い出された。五回もぶちこまれておいて、まだまだ犯罪のインスピレーションには事欠かないようだった。ぼくは彼が好きだったけれど、またチームを組んでハッスルしようとは思っていなかった。まだ、仮出所になってから四ヶ月半しか経ってなかったし。彼とは冷静に話し、ハッスルの誘いを上手くかわした。

 一週間ほど、ペッパーとは連絡をとっていなかった。ドラッグ・ストアの閉店間際に、二度ほど電話が入っていた。電話口で、彼女は舌をぺちゃぺちゃいわせたり、何かをしゃぶっているような音をたてて、ぼくをあの部屋に呼び出そうとした。言い訳めいたことをいって、放置しておいた。まったく、街のハスラーたちといいようにヤリまくってるくせに、何故、ぼくのことがそんなに気になるのか、不思議でしょうがなかった。

 じつは、《涙目のショーティー》からアドバイスをもらう前の日に、刑事のダランスキーが煙草を買いに店へ来たことがあった。そのときに、何だか訝しげな視線をぼくにくれたのを覚えている。

 さて、ぼくは、歩いて家へ帰るところだった。その日は休みだった。土曜日の夜九時をまわった頃だった。犯罪映画を観てきた帰りだった。かなり残酷なドラマだった。青二才のくず野郎が仲間を裏切ろうとする。だが、逆に自分が刑務所送りになってしまう。長いムショ暮らしのあいだ、中でタチの悪い敵を作ってしまうのだった。ようやく出所したとき、ばかデカい黒塗りの車がやってきて、そいつを蜂の巣にしてしまう。

 巨大な黒い車が、大通りをぼくの方へ向かってきていた。頭のとがった小さなドライバーには、見覚えがあった。ショーティーだ。彼はあごをしゃくりながらドアを開け、ぼくに乗るように言った。なんだか興奮したよ。車がピカピカになってるからさ。

 彼は言った、「ブラッド、笑えよ、老いぼれのショーティーがいいニュースをもってきてやったよ。五百ドルの仕事がある」

 ぼくは、「いいよ。なんかヤバそうだけどさ、連れてってよ」

 彼は、「大丈夫だよ、余裕だから。なあ、《優しいチンコ》の小僧、おまえにぴったりなんだよ。わかるだろ」

「イカしてくれたら五百ドル払うって女がいるのかな、そんなのだったら是非。金のためなら一週間前に梅毒で死んだ女でも寝るよ」

 すると、「じつはさ、ペッパーなんだよ。あの女をベッドにつれてって、一通りサーカスをやってりゃいいんだよ。それだけだよ。できるか?」

「もちろん。その見物料の分け前は、貰えるんだろ。で、誰に見せるの?」

 彼の瞳が、神経質に動いた。こいつはとんでもないジョーカーなんだ。ぼくは、ここで逃げ出しておくべきだった。

「そいつは言えないんだよ。金のことなら心配すんな。保証する。やるだろ?」

「ああ。でも、もうちょっと知りたいな。なんでやるんだ?」

 話によると、こんな感じだった。ニューヨークからやって来た恐喝を得意としているハスラーが、ペッパーの旦那に目をつけたという。

 そのハスラーはペッパーが淫乱なビッチだと知っていて、旦那が彼女に死ぬほど入れこんでいることも調べてある。彼女がもともと娼婦だということを承知でカタギにしてやった旦那だが、とにかく嫉妬深い。もし、あの女が他の男とヤリまくってることを知ったら、何をやらかすか予想もできない。

 そこでハスラーは、ペッパーが浮気をしている、明白な証拠をつかもうと考えた。ペッパーを計画に協力させれば、成功は間違いないという。必要なのは、彼女がセックスしている写真だった。

 計画はシンプルだった。ペッパーを恐喝し、彼女を使って旦那のやってる賭博場にニセの「当たり券」を入れる。彼女の立場なら、それも簡単らしい。

 あらかじめ決めておいた場所にペッパーを連れてくれば、そのハスラーからぼくに五百ドルが支払われるということだった。

投稿者 Dada : May 20, 2005 06:00 PM