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May 10, 2005

SALTY TRIP WITH PEPPER 1

 ミルウォーキーへ戻って最初にしたことは、保護観察官のランド氏のところへ報告に行くことだったと思う。うんざりするほど質問を受け、書類の山に目を通した後、彼はぼくにIQテストをした。スコアを計算し終えると、青い瞳をまん丸くしてびっくりしていたよ。

 IQ175の少年が、なぜピンプまがいの事をして逮捕されたのか、理解できないみたいなんだ。でも、もし、あれが本物のピンプ・ゲームについてのテストだったら、刑務所の「ダメ・ピンプ」の自慢話に首を突っ込んで、言葉を覚えたりして、早くピンピンしたくて、もうピンプになったつもりですらいたぼくのスコアは、0点だったに違いない。

 ぼくは、18才になっていた。6フィート2インチの長身で、痩せ細っていて甘ちゃんで、馬鹿だった。栗色の瞳は深く沈み、夢見がちだった。肩幅は広かったけれど、腰は女の子みたいに細かった。ハート・ブレイカーになる準備は万端ってところだった。必要なものといったら、《いい感じの服》と娼婦。それだけだった。

 ママのビューティー・ショップは、小さいけれど、大通りに面していて、上手くいっていた。そして、ママは、まったく予想もしてない災難にぼくを巻き込んでしまうよう、宿命づけられていたみたいだ。

 保護観察官がしめした就職の条件に従って、ぼくは、ママの友だちが経営しているドラッグ・ストアの配達をしはじめた。運命としか言いようがないのだけれど、ママの店とドラッグ・ストアは同じビルに入っていた。その店の目の前のアパートメントに、ぼくとママは暮らしていた。

 ある日、仮釈放になって3ヶ月が過ぎたころだったが、ママが舗道にいたぼくを店へ来るよう呼んだ。たった今、眉毛を描いてあげているお客さんを紹介したいというのだ。ドアを開けると、パーマをかけている何人かの客の髪の毛から発せられるちくちくした匂いをくぐり抜けて、店の奥の方へいった。

 すると、彼女がいた。クリスマス・ツリーっぽくぴかぴかしていた。ドレッシング・テーブルの鏡の前に座って、ぼくに背中を向けていた。ママは、眉毛を描くのをやめてぼくを紹介した、「イベッツさん、息子のボビィです・・」

 鳥に催眠術をかけている黄色い猫みたいに、彼女は身動きひとつせず、気怠そうな緑色の視線を鏡ごしにこちらへ向けた。そして、喉をぐるぐる鳴らすような声で言った、「おや、ボビィ、あんたのことは色々、聞いているよ、会えて嬉しいわ、《ペッパー》と呼んでちょうだいね、みんなそう呼ぶの」

投稿者 Dada : May 10, 2005 01:17 AM