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May 09, 2005

FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 23

 オスカーが、ぼくに陰険な一瞥をくれて房へと戻っていったとき、ぼくには彼が完全に壊れてしまったことが理解できた。バケツを持ち上げると、その中に手を突っ込んで何やら動かしているのだった。

 そして、うんこを掴みだしたのだ。右手の手のひらでぐちゃぐちゃと固めたかと思うと、今度は左手に移してぐちゃぐちゃと揉んでいる。パレットみたいな要領で左手を使い、右手の人差し指にうんこをつけると、牢屋の壁にアートを描き始めたんだ。

 まるで「システィーナ礼拝堂の天井画」を描いているかのように、その顔には至福の表情が浮かんでいるんだ。もう、ダメだと思った。階段を下り、下の看守たちに報告したよ。次の日、彼らは、オスカーを精神病院へ連れ去って行った。もう三十年が経つけれど、今もそこにいるんじゃないかな。

 残りの八ヶ月間はあっという間に過ぎた。仮釈放処分の審査委員会へ送られ、ピンク色の通知を辛抱強く待っていた。白だと拒否されたっていう意味なんだ。また、次の審査を待たなくてはいけない。

 そして、鉄格子の間を縫って郵便係が通知を持ってきてくれた。手ががたがた震えたよ。開けるのが困難になるほどだった。そして・・それはピンクだったんだ。思わず、鉄製の壁に向かって拳を叩きつけたよ。痛みも感じないほどに幸福な瞬間だった。

 出所するとき、安物のラシャ格子のスーツを着せてもらった。プレッシャーだらけのこの場所を出られるなら、コールタールと鳥の羽根でできた服でも喜んだかもしれない。最後に、所長と会うことになった。

 事務所に入っていくと、「おい、この雪だるま野郎。おまえは幸運のお守りを持っていたみたいだな。いずれにせよ、二週間後にまた会おう」まだ、完全に出所しているわけじゃないから、最初に会った時と同じようにへらへらと愛想笑いを浮かべておいたよ。

 外へ出ると、酸素が爆発しているみたいにフレッシュだった。酔っ払うくらいに空気を吸った。刑務所を振り返ると、礼拝堂から口のきけない看守がぼくを見下ろしていた。でも、あの鉄のムチはもう、何も言ってこなかった。
 
つづく

投稿者 Dada : May 9, 2005 06:50 PM