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May 07, 2005

FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 22

 あの一撃の殺人的なありさまを思い出していた。そしてそのあとの悦に入った表情も。囚人たちの噂では、あの看守は、アラバマ出身だということだった。それで、あいつは聖書が嫌いだからオスカーを狙うのではないと解った。看守はアイリッシュの女の子の件を知っていたんだ。

 オスカーは、病院から「穴」へ直行させられた。十五日間の禁固刑だ。「禁止食品の所持」と「職員に対する身体的抵抗」が理由だったけれど、ぼくの見たかぎり彼のした抵抗なんてなかった。骨や皮が鉄のムチに対して必死で抵抗していただけだったよ。

 毎月、仮釈放にについての審査会が開催されていて、どの囚人も何ヶ月かの最低限の役務をこなすと、この日が来るのを心待ちにするのだった。ストリートに戻れるかもしれない。オスカーが穴の中にいるから、ぼくは何となく寂しかった。頭の四角い男ではあるけれど、へんてこな笑いのツボをもってるいい男でもあった。ちょうどそのころ、何人かの男たちが別の大きな刑務所から移送されてきた。彼らは《マック》、つまりピンプだということだった。

 天気が悪い日に外で遊べないと、ぼくはよく彼らが話しているテーブルに加わるようになった。多くは話さなかった。ただ、それぞれが自分のピンピン・アビリティを競うように語るのに熱心に耳を傾けるのだった。そこには沢山のうんちくがあり、独特の言い回しがあった。ぼくは、外へ出たらいつでもそれらを使えるよう、盗むのに徹していたんだ。

 そして、いつも興奮して部屋へ戻るんだ。そこに女たちがいるつもりでピンプらしく振る舞ったりするのだった。勿論、そんなリハーサルはストリートでは一切役に立たない。そんなことも解ってない阿呆だったよ。

 オスカーは穴からだされると、所内の一番高い場所にある独房へ移されたから、会えないと思った。会いに行こうとも思っていなかったから、ふいにそのチャンスが訪れたとき、準備が出来ていなかった。

 彼の番号が記された扉を穴から覗くと、痩せこけたおかしな男がバケツの底の穴を覗きながらこちらに背中を見せていた。へらへらと笑っているようだ。もう一度、番号をチェックしたけれど、たしかにオスカーの房なんだ。

 鉄格子のバーをよけて、食事の差し入れ口を引いてみると、骸骨男は飛びあがってこちらへ向き直った。動物みたいな目をしていた。そしてオスカーだった。頭の側面にある禿げあがってしまった傷口をみて、ようやくそうだと解る感じだったよ。

 ぼくのことを覚えていないみたいなんだ。それで、「おい、どうしたんだよ,信仰は誰にも邪魔できないんだろ・・」と言っても、突っ立ったままで、ズボンのチャックからポコチンがハミでている。それで、「おいったら、こんな場所から這い出て、明るい未来へ進んで行くんだろ?」

 でも、ぼくの言葉を無視している、と思ったら、喉の奥のほうから出てくる、ようやく聞き取れるほどの、不気味な、ピッチの高い、歌っているようで泣いているような声を発している。交尾の相手を探す狼男みたいだった。それでようやく彼の精神が心配になってきた。

 しばらく、そこで何とかコミュニケーションがとれないか努力してみたのだけれど、ムリだった。まだ、穴から出てきてたったの2時間しか経ってなかったから、神経の回路の何処かが遮断されたままだったんだよ。

投稿者 Dada : May 7, 2005 06:45 PM