« FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 19 | メイン | FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 21 »

May 05, 2005

FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 20

 六ヶ月が過ぎたころ、大きな刑務所から移送されてきた若いニガの囚人が、あの《パーティータイム》からの伝言を伝えてくれた。

 それによると、ぼくたちの関係は引き続きタイトだし、まだハスラーとして未熟なのだったら、またいつでも手を組もう、ということだった。

 路地裏で風船野郎に彼が拉致されて以来、ぼくはチキン野郎のままで申し訳なく思っていたから、彼がそんな言葉を送ってくれたのは、良い知らせだった。

 ところで、口のきけない看守は、全ての囚人を憎悪していたが、オスカーにはとりわけムカついているのだった。

 看守がキリストをも嫌っていて、オスカーが熱狂的な信者だというのも知っているから、余計にイラついていたのかどうかは知らないが、とにかくよっぽど彼のことが気に入らないみたいだった。

 オスカーとぼくは、二段ベッドをシェアしていた。ぼくが下だった。夜、家に帰って本か何か読んでいるはずの看守が、ぼくたちの房のすぐ側に立っていて、聖書を熱心に読み耽っているオスカーをまんじりともせず見上げている光景を何度も目撃して、震えあがったものだよ。

 その冷酷でぎらぎらした緑色の視線が何処かへいなくなると、ぼくはひそひそ声でこう言うのだった、「オスカー、マイメン、おまえのことは嫌いじゃない。だから、ひとつ友だちからの助言を聞いてくれないか。友人として言ってるんだ。おまえが聖書を読んでいる姿は、あの看守を、なぜかイラつかせるみたいだぜ。なあ、どうして読むのを止めないんだ。嫌われるだけだよ」

 だが、この頭の四角いお馬鹿さんは、いっこうにかまうことなく、看守が来ていることにも気がついてないようだった。そして、「きみが友人だというのは知っているし、助言にも感謝しますよ。でも、こればっかりはダメです。ぼくのことは心配しなくていいです。神がきっと守ってくださるから」と言った。

 ママは、週に一通は手紙をくれた。そして、毎月、訪ねてきてくれた。最後に来てくれたときに、ママをそんなに心配させないために、週に一回くらい刑務所長と長距離電話で話すのもいいんじゃないか、と提案してみた。刑務所の外に、ぼくのことを愛していて、健康でいて欲しいと願っている人が存在していることを、所長に知ってもらえるからだ。

 彼女は、元気そうだったし、貯金もしているみたいだった。ビューティー・ショップを開店したという。ぼくが仮釈放になったら、友だちが仕事を世話してくれるはずだから、とも言っていた。ママが来てくれた夜は、一睡もせずに天井を見上げながら、ぼくたちふたりの惨めな暮らしについて振り返るのだった。ぼくは、ヘンリーの顔のほくろやしわを、ありありと想い出せた。

投稿者 Dada : May 5, 2005 05:30 PM