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April 12, 2005

TORN FROM THE NEST 8

 猫が殺されてから九十日後、ママはようやく目を覚ました。灰色に曇った四月の朝、あいつが酔って口を半開きにしてぶっ倒れている隙に、おれたちは荷物を持てるだけ持って家を出た。とりあえず身をひそめたホテルはホットプレートと共用のトイレがついてるだけだった。

 三年と半年のあいだ、スティーヴはおれたちの人生をストンプした。おれはもうすぐ14才になろうとしていた。

 八月四日が誕生日だった。悪魔的な偶然でスティーヴはこの日をめちゃくちゃにしてくれた。あの凍えるような朝から、あいつは逃げた獲物を探してスラム街をしらみ潰しに歩いていたのだった。

 ママが働いている白人の家でケーキを焼いてくると言ってたから、おれは首を長くして待っていた。夕方の6時にはパーティーを始めるはずだった。

 でも、八月七日に帰ってきた。それも、病院から。あごを針金で吊って、全身あざだらけで。スティーヴが道でママを見つけたらしい。路地裏で足が立たなくなるまで殴ったあと、薄汚いゲットーの地下墓地へ消えたという。

 その夜から、おれは暗い井戸の底にしゃがみこみアイスピックを握りしめてあいつが現れるのを待ち続けた。だが、ついに現れなかった。

 二十年後、ホテルのスイートルームの窓辺で一服しながらストリートを眺めてたら、なんか見たことのある猫背で白髪のジジイがゴミを回収していた。

 一瞬、意識がぶっ飛んで、その理由がわかったときには、銃を片手に赤いシルクのパジャマ一枚で道へ飛び出していた。よく晴れた朝だった。

 ゴミ収集車は角を曲がって1ブロック先まで走り去っていた。もうぶっ放しても届かない距離だった。やがて通行人がわらわら集まりだしたから、彼女のレイチェルがおれの腕をつかんでその場から立ち去るよう促した。

 それが、スティーヴを見た最後だった。だが、今でも、もしあいつと遭遇することがあったらおれは何をするかわからない。

 おそらく、ママは叩きのめされた痛みから学んだこともあっただろう。

 ホテルの部屋にいるとき、窓の外のネオンサインに照らされたママの顔を見るたびに、おれは心配だった。目をぎらぎらさせて、天井を見上げてぼーっとしていた。馬鹿野郎との激しいセックスのことばっかり思い出してたんだよ。クズ野郎のくせに、いっぽうでベッドの上じゃサナバビッチだったってことだろう。

 あれだけ酷い目にあってんのに、まだあいつのチンコだけは忘れられないんだよ。ボコボコにされてよかったと思う。じゃなきゃ一生、わかんかった。

 ママはきつ〜いお仕置きでほろ苦い教訓を得た。田舎の女の子がキザな都会のピンプと火遊びをした。そして、瞳に罪悪感と悲しみが宿った。

 おれたちはもう二度とロックフォードの緑の丘にいた頃のような平和な暮らしはできなかった。ママはひとりの善良な男の人生を台無しにしてしまった。ヘンリーは、おれたちに置き去りにされた一年後に死んだ。彼は孤独な亡霊となってママが墓に入るまでつきまとうことになった。

 ママは、おれが最初に抱いていた、愛情と尊敬に満ちた彼女のイメージの断片だけでも取り戻そうとやっきになった。だが、もうあまりにもいろいろな物事を見すぎていたし、十分すぎるほど苦しめられていた。

 そして、いよいよジャングルがおれを飲み込もうとしていた。

 教会や、ヘンリーや、ロックフォードのボーイ・スカウトから学んだことをみるみるうちに失っていった。そのかわりにストリートの毒をスポンジみたいに吸収しはじめた。学校が終わると、道ばたにたむろして、スティーヴが大好きだったくだらないゲームをして遊ぶようになった。

 甘く妖しく危険な遊び。おれは心の弱いすべての女の子たちに《それ》を仕掛けはじめた。ある夜、女の子の家の裏庭でフェラチオさせてたら、父親にみつかって怒鳴られダッシュで逃げた。お口が絡みつくような濃厚な味わいに、おれはもう我慢できなくなっていた。
 
- つづく -

投稿者 Dada : April 12, 2005 05:00 PM