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April 09, 2005
TORN FROM THE NEST 6
おやじの新しい家には高価な家具や絵がこれでもかってくらい詰め込まれていた。リネンに投資して何千ドルも儲かったのだという。
一週間後、ハスラーの叔父さんがスティーヴを連れて遊びに来た。下見に来ていたわけだ。おやじは一番いい葉巻の封を開けて《自称ママのいとこ》をもてなした。こいつらが計画を実行に移すまであと数週間ってところだった。
まったく、ママたちが何を考えてるのかナゾだった。おやじとママがよりを戻してくれれば、子供のおれはそれでよかった。だが、そんな甘いことはこの世にあり得ないことを、ミルウォーキーで思い知らされることになった。
その日、おやじと親しい白人の家へ遊びに行くことになっていた。ママは朝からそわそわして落ち着きがなかった。訪ねていった先では同じ年ごろの子供がいて、おれは楽しく過ごすことができた。
ショックをうけた人間の表情を腐るほど見てきた。だが、その日、うちのおやじが見せた絶望的にトラウマチックな顔はちょっとない。家へ帰ってきて、ドアに鍵をさしこみ、扉を開くと、中は空っぽだったのだ。ぐうの音も出なかった。家具も絨毯もすべてやられていた。エスプレッソマシンから壁にかけた絵にいたるまで、何もかも。ママの持ち物もなかった。
ママはおやじの肩に手をおき、慰めた。涙が頬をつたって滴り落ちていた。まさかってくらい完璧に成功したので、うれしくて泣いてたんだろう。女優になりたがってたし。じっさい、なれそうだった。オスカーも獲れたかも。
しばらくインディアナポリスの友だちのところへ行っているから、新しい家ができたら呼んでちょうだい、とか何とかいってママとおれはとんずらした。
90マイルを列車に揺られてミルウォーキーへ到着してみると、スティーヴが家を貸りて待っていた。その家の中にはおやじが買った家具がびっしりと並べられていた。こんなのちっとも幸せじゃない。しかも、あいつは博打キチガイだったから、数週間でほとんどの家具を売り払ってしまった。
投稿者 Dada : April 9, 2005 10:25 PM