« FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 7 | メイン | FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 9 »

April 21, 2005

FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 8

 信じられないことに、15才で平均98.4点、トップで高校を卒業した。

 教育費は全額負担してあげるから、この子を大学へ進ませるべきだとママに力説する、タスキーギー(南部の黒人大学)の愛校心あふれる卒業生たちがごまんといた。ママは飛びあがってよろこんだよ。

 彼らは負債を抱えてまでして立派な服を買いそろえ、おれを大学へ送りこんだ。じつはおれがストリートの毒にたぷたぷと浸かってることなんて、夢にも思ってないようだった。

 まるで、ケンタッキー・ダービーに屁たれの馬を送りこんでおいて勝つと信じて疑わない間抜けのようだった。期待と血のにじむようなお金を、ダメ人間に賭けてるってことに全く気がついてないんだ。

 ものすごい期待がかかっていた。おれが勉強して成功すること。ママを罪悪感から救いだしてあげること。あの心の広い卒業生たちの信頼に応えること。

 ところが、おれの《心の目》はストリートによって塞がれていた。汚らしい立ちんぼの女の目くばせで熱っぽくなってるフリーキーな男だった。

 大学のおれは、鶏小屋に放り込まれたキツネみたいなものだった。入学して九十日くらいで処女の女の子6人くらいとセックスしたよ。

 そんなこんなで新入生のときはヨロシクやってたんだけど、「あいつは最低だ」っていう噂があまりにもひろがっちゃって。野郎にはすごい妬まれてたし、期待されてるのに女子大生とセックスしてるだけなのも、さすがにマズイと思いはじめたんだ。

 二年生になると、学校の近くの丘にあるバーで遊ぶようになって。ジュークボックスとかもあって、クラブっぽい感じなんだ。まあ、南部のノリなんだけど。おれは北っぽいスーツで発音とかもぜんぜんちがったから、そのへんのお尻のホットな処女の女の子たちには王子様みたいに見えたらしくて。

 とくに、お尻がまるくて、いつも裸足で、すごい可愛い15才の女がおれに夢中になっちゃって。ありえないくらい。まいったよ、まったく。ある夜、いつも逢い引きしてた草むらに行くの忘れちゃって。もっとお尻が大きくて、熱くて、もっと丸いほうの女がいる草むらに行ったんだ。

 ところが、噂でおれが二股かけてるってことがそのコにバレたんだ。次の日の真っ昼間、おれは学校のカフェテリアからでて広場へ向かっていた。学生と教授の声であたりは騒々しかった。

 そしたら、その女の子が立ってて。まるで売春宿の法王みたいに。ポテト袋みたいな服はすごい汚れてて、丘から来たってことがまるわかりの酷さだった。裸足の足は埃まみれだし。それでおれのこと睨みつけてるんだ。

 で、突然、アパッチ族みたいな雄叫びをあげた。ヤバイと思って逃げようとしたときにはもう遅くて、怒りに燃えた顔が目の前にあった。

 脇の下からきらきらした汗を流しながら腕をふりあげているんだ。しかも、その手には短剣みたいな感じで割れたコカ・コーラの瓶がにぎられているんだ。ぜったい刺されたら死ぬくらい尖ってて、太陽で光ってるんだ。

 豹があらわれて発狂してる羊たちみたいに、学生と教授が大騒ぎをはじめて。まいったよ。短距離走の世界記録ってどれくらいなのか知らないけど、そのときのおれの逃げ足が、たぶん、いちばん速かった。それは、間違いないよ。大急ぎで走って逃げたからさ。ここまで来たら大丈夫だろうと思って振り返ったら、土けむりの中に佇んでる女の姿が見えたな。

投稿者 Dada : April 21, 2005 06:45 PM