« FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 12 | メイン | FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 14 »

April 27, 2005

FIRST STEPS INTO THE JUNGLE 13

 ネズミの弁護士は、ワシみたいな顔をした白人の裁判長に、すっかりびびりあがってしまい、ぼくの減刑をお願いするのを忘れてしまった。彼のあまりの威厳の高さを前にして、じぶんは哀れで、みじめな、ダウン・サウス出身の人間だということを、思い出してしまったのだろう。体が麻痺してしまったかのように立ち尽くして、ただただ、ぼくに下される判決を待っているばかりだった。

 そこで、ぼくは裁判長の青い瞳をしっかりと見つめながら、こう言った、「裁判長殿、ぼくはじぶんがしてしまったことを、後悔しています。今までこんなことしたこと無いんです。もし少しだけ時間を下さいますならば、もう二度とこんな場所に戻って来ないことを、神に誓います。おねがいします。裁判長殿、ぼくを刑務所に送らないでください」

 ところが、氷のような目で見下ろしながら、「残念ながら、チミは悪い若者だな。純粋な若い女の子をたぶらかし、州の法律を破ったことは実刑に値する。きみのやったことは、保護観察処分がふさわしいようだ。きみのためにも、社会のためにも、1年以上18ヶ月以下の少年刑務所への服役を、言い渡す!」

 ぼくは暴れだした、べたべたした手で肩をつかんでくるネズミの弁護士を払いのけ、裁判所の席の後ろのほうで、しくしくと泣きはじめたママを見ないようにしながら、氷のように冷たい裁判長へ手を差し延べた。

 ジュンのお父さんは、法廷にも屈強そうな男をたくさん連れて現れるような大物だったのだ。その彼が、ぼくが確実に刑務所へ送られるよう、裏で糸を引いていたにちがいない。ぼくの判決は、強制わいせつ罪で、売春罪は適用されなかった。なぜなら、売春とされるには、娼婦がいなくてはならないからだ。ジュンのお父さんは、娘を娼婦と呼ばせないようにした。

 こうして、ぼくはママの髪の毛を灰色に染めていく、最初のステップを踏みだした。スティーヴなら、褒めてくれたかもしれないな。ちがうかい。

投稿者 Dada : April 27, 2005 06:40 PM