まごころ

代官山の蔦屋のハイ・エンドな現実感で、
まだ、動揺している……。

ガチで、一回いってみて。

あそこで本を選ぶ自信が、ぼくにはない。
<日本の名随筆>を一円で買っているぼくには……。

なんか、自分が自分の人生を
どうしてもこの様にしか生きられなかった、
こぼれ落ちてしまったなにかが、
代官山の蔦屋には、全てある……。

例へば、iPadでプレゼンすること。
スターバッコスのこーひーをのみながら、
海外のインテリア雑誌をうんたらかんたら……。

ああ……。ボタンを掛け違へてしまつた。

あそこで調子こいてる筈だつたのに……。

しかし、あの店に、丸谷才一の本が、
何冊あるというんだ??

ぼくなら、あすこで日本の家紋のデザイン集を
見てゐる女性に、丸谷才一の文学観について、
二時間は講釈できるのに……。

或いは、日生劇場で海老藏を見たこと。

更に二時間は、海老藏について教えてあげるのに……。
そうして、ガラス窓の向こうでは、チエチエが、
新しいデッキでテールスライドしてゐる……。

あいつは、ぼくの友達なんだ、と言う……。

こんな所に居てもつまらないよ、
新橋演舞場では、藤山直美が<銀のかんざし>
演じているんだぜ……。手をとって連れだす……。

日本橋の三越へいったことあるかい、
佐藤玄々の<まごころ>を見たことないなんて!

……。


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