Ultimate Healing 30
第三十話 ヒロ兄の誕生を祝福しよう
右手に持っているのは、ボルヴィック?なの?——シチリアのマフィアたちが、車座になって、レゴのブロックをじゃらじゃらと手で掻き回して、透明の青いパーツを探している光景が、ぼくには浮かぶのだ。かれらは、ヒロ兄を祝福しているのだ。かれらは、ヒロ兄を誕生させたのだ。「小さいヒロ兄」も、ぼくたちのヒロ兄と同じように、ボルヴィックのペットボトルは、手放さないぜ?——オバケのQ太郎っぽい、柔らかい素材の服を見てみろよ。いや、ぼくの知ってるヒロ兄は、こんな純白のワンピースは着ていなかった気がするけどさ。このヒロ兄は、まだ赤ちゃんだし、生まれたばかりだから、このオムツみたいな白くて柔らかい服が、いちばん似合うんだ。それにしても、小さいヒロ兄ったら、そこそこ良くできている。裾のドレープの表現を見てくれ。繊細かつ大胆だぜ。生きてるぜ、こいつ。裸足だぜ、こいつ。左手は、見方によっては、中指を立ててるようにも見えるんだ。生まれた瞬間から、世界に対して全力で抗ってるんだ。かっこいいよ。小さいヒロ兄。右手にボルヴィック、左手でファックユー。なにこの、純白のサングラス。凝ってるよ、アーチ状になってる。かなり、かましてきてる。レンズのパーツは何なのか、と。基本セットに入ってないだろ、と。こういう凝ったブロックも、何人ものシチリアのマフィアたちが、車座になって、ぶちまけたレゴのブロックをじゃらじゃらと手で掻き回して、見つけだしたんだろうよ。シチリアのマフィアよ、レゴ兄をありがとう。——ぼくたちは、五年前に受け取りそこねた宝物を取り戻したんだ。宝はいつも足元にあるんだ。小さいヒロ兄を蹴っとばさないように注意しながら、われわれは、大きいヒロ兄の帰還を待ちつづけるつもりだ。大きいヒロ兄は帰ってくるだろうか?——田村くんは、ぼくらがこうしてヒロ兄の話をしているかぎり、かれは帰って来ない、といった。ぼくは、まったく逆なんだ。こうしてヒロ兄の話をしていれば、もうすぐ、ヒロ兄は帰ってくると思うんだ。今回、奇跡的なシンクロ率を計測したぼくと田村くんですら、この点にかんしては、意見が分かれた。おまえらはどう思う?(終)
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- Published:
- 6.10.10 / 9am
- Category:
- Ultimate Healing
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