この本を作ることは、精神科医のカウンセリングを横目で見ているみたいでしたよ。それで、作り終えてみて、山崎さんが言ったのが、「ぼくは怪人20面相になりたかったんだ」って。これが、結論だったの。つまりさ、隠れ家みたいな店にしたり、ドクロのマーク作ったりさ。小学生のころ、江戸川乱歩が好きで、漫画とか描いてたんだって。『怪人20面相』はフィフティーズですよ(笑)。戦後だもん、あれ。年をとると、幸せとは何か、しみじみ考えるけど、クロって犬が走ってることなんだって。洋服屋もさ、最近、自殺してる人が多いんだって、身の回りで。すごく有名なブランドの社長が首を吊ったりとか、多いみたい、原宿界隈で。BIGIの人も買収されて、違う会社にいるでしょう。洋服屋は見栄の世界なんだって、いってたよ。つまり、見栄を張り続けた結果、商売が上手くいかなくなる。山崎さんみたいに、マニアに向けてコツコツやってた方がいいんだって。山崎さん、お金使わないんだよ。部屋着も安くて着心地のいい服で、コンビニでごはん買ってきて、ひとりで食べて、みたいな。冷蔵庫の調子が悪いんだけど、あと何年生きるか分からないし、新しいの買わないでおこうと思ってるんだよ、って。そういうかんじですよ。お金を使うといったら、タバコ銭みたいね。タバコ、好きなのね。ピンクドラゴンの入り口にも、自動販売機があるでしょ。山崎さんが買うためにある(笑)。犬の散歩のときに、タバコだけ買って、みたいな。そういうライフスタイルみたい。おふくろさんの教えで、「米びつ感覚」。とにかく、北海道の赤平の炭坑で、給料が入ったら、米を買いなさい、という。それだけあれば、人間は生きていけるんだから、という。これは、森永さんにとっても思想になってるんだよ。つまり、執着したらいけないっていう。森永さんの持論なんですけど、「拘る(こだわる)」って字がダメなんだって。漢字がよくないでしょ。「拘りすぎちゃったらダメだ!」って二人でいってるよ、お互いに。この本もさ、じつは、山崎さん、印税いっさい受け取ってないんだよ。森永さんに全部あげるって。「ぼくはあんまり、言ったことに責任取りたくないから」なんて笑ってたよ。でも、僭越ないい方だけど、森永さん、それくらいのことやってると思いますよ。山崎さんも森永さんのこと、愛してるんじゃないですか。(赤田祐一・談・終)
クリームソーダのブログ(アメブロでやってるっていうのがビビるんですが)で森永博志さんが言及してくれました。センパイありがとうございます。