この本でぼく(赤田)が個人的に好きなのはね、久保田二郎の登場場面。ブラックキャッツがレコーディングするときに、やり方を教えてあげるんですよ。久保田二郎って知ってる?植草甚一なんかの仲間ですよ。植草さんにジャズを教えた人なのね。「クボ爺」とかいって。森永さんは、一時期、成城学園のクボ爺の家に居候してたんですよ。『ポパイ』で一回、ピンクドラゴンの大特集したんですよ。そのときに、「グリーサーキッド」とかいって、グリースをいっぱいつけてる男の子は、アメリカではこう呼んでいる!とかいって、クボ爺が教えたらしいんだけど、本当に「グリーサー」っていうのかな?(笑)ジャズマンだからね、久保田二郎。最後は、下北の路上で死んじゃうんだよ。死因はよく分からないけど、孤独死なんだよ。久保田二郎の文章、よんだことないの?全部ホラなんだよ。おしゃれな石丸元章くんっていうか。面白いですよ。だけどね、今よめるのは、ゼロ。角川文庫の古本とかでは拾えると思うけど。著書は十冊くらいあるよ、でも絶版。大好きだよ、全部ホラ。アメリカのホラ話。ジャズライター。大橋巨泉なんかも尊敬してるみたい。批評じゃないんだよ、紹介。おしゃれな紹介。植草甚一にいちばん影響を与えたらしいけど。クボ爺、クボGとかいって。あとはね、深沢七郎の『東京のプリンスたち』って小説、よんだことある?よんだ方がいいですよ、絶対。あのね、喫茶店に不良がたまって、エルヴィス・プレスリーと原子爆弾の話してるってだけの小説。カッコいいんですよ、これ。『宝はいつも足元に』の中にも、喫茶店のシーンがいくつか出てくるんですよ。すごくビビッときたんですけど。伴ちゃんが死の床にいてさ、山崎さんが喫茶店で待ってる話とかさ。池袋の喫茶店でウェイターもやってたんだって、山崎さん。楽しくてしょうがなかったって。同伴喫茶でやってたらしい。ソファを探ると百円玉がじゃらじゃら落っこってる。一日の稼ぎよりもいいんだって。今は違うかもしれないけど、喫茶店ですよ。酒は出なかったと思うけど、ジュークボックスがあって。最新の音楽が流れてて。いつもいったら、だれかがいて、みたいな。サロン。喫茶店文化ってあったんじゃないかな。あと、スナック文化。スタバとかになっちゃったけどね。