CREAM SODA 2

 遂に、そのときが僕にやってきた。今年の10月、僕の体に異変がおこり緊急入院した。体全体が異常にむくみ、眼もやられ、睾丸がメロン大に腫れてしまった。病院に行って検査したら、心臓の弁に障害が見つかり、酸素を送る量が半分以下になり、腎臓が機能していないことがわかり、その日のうちに心臓の手術が行われた。入院したとき、僕の肌は木の幹みたいにガチガチになっていて、もう治らないだろうと思っていた。体の状態もひどかったし、病室の雰囲気も、何人も次から次と医者がやってきて、普通じゃないものを感じていた。
 手術は、そのあともう一回、大手術だった。それはものすごく費用のかかる手術で、病院側は、僕は体にタトゥーをいれてるし、つきそいの若い社員も全身にタトゥーをいれ、それが服からのぞいていて、いったいこいつら何者なのか、ちゃんと費用払えるのかって心配だったと思う。
 それも解決して二度目の大手術が行なわれた。そのとき、不思議な体験をした。あれは臨死体験だったのか。僕が裸になって手術室に送りこまれたとき、まず、すべてがコンピュータで動いてる部屋が『2001年宇宙の旅』と同じだなと思った。医者が何人もいて無言なのが、奇妙に感じた。
 手術中は眼をつぶっていて何も見えないはずなのに、僕はまるで立会人のように、手術のプロセスすべてをジッと見ていた。ペースメーカーが心臓に埋めこまれてゆく手術のこまかい動きをハッキリと見ている。盲目の状態なのに、見ている。(『団塊パンチ』2009年2月号より、構成・森永博志)

宝はいつも足元に

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